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運搬コストが槍玉に 小型家電リサイクルで報告書
2017年12月1日
「取引全体として採算性を確保するためには、効率的な運搬も考慮した契約内容を検討する必要がある」。総務省行政評価局は11月下旬、使用済みのパソコンや携帯電話といった小型家電のリサイクル制度について、各自治体による制度への取り組み状況の調査結果を公表した。リサイクル対象の家電を回収したのち有価物として認定事業者に販売する自治体の取引スキームの中で、運搬費用がかさむことで損益が悪化していると主張する自治体が一定数あることが報告されている。希少金属(レアメタル)を含むことから「都市鉱山」などともてはやされて回収が始まった使用済み小型家電だが、有価物取引がそもそもなじまないかもしれない可能性が残るなか、引き渡しに関する運搬コストがここでも槍玉に上げられようとしている。
自治体の採算と運搬コストの関係について行政評価局は報告書のなかで、冒頭のような記述のほかにも再三にわたって指摘。「運搬費も考慮すると、売却益を見込める回収量を確保できない」(報告書P26)、「回収した使用済み小型家電の引き渡し場所が遠方に所在していることなどから運搬費が高額となり、取引全体では損失が生じるおそれがある」(同28)、「運搬費が高額となることが小型家電リサイクルの取り組みのあい路となっているおそれがある」(同30)。報告書は、2015年度に全国で回収されたリサイクル小型家電の量が約7万?となり、同期間に捨てられたと思われる小型家電全体の約1割程度にとどまったことを問題視し、「小型家電リサイクルの一層の促進を図る観点から調査」したことを明記。回収が進まない原因を、効果的な回収方法が確立していないことや運搬費用がかさむことなどにあると結論付けている。 調査した全国144の自治体のうち、運搬費用も含めた取引全体の損益を把握していたのは85市町村。そのうち、取引全体で損失が生じていたのは13市町村に過ぎず、残りの72市町村は「利益が出ている」(67市町村)か「損益がゼロ」(5市町村)だった。つまり、効率のいい回収方法を確立している多くの自治体では、運搬費用を賄っても余りある、もしくは収支相償の事業となっている。
回収率が1割程度にとどまったのも、「資源価格の下落による採算性悪化」によって、処理を引き受ける認定業者が処理を嫌ったためともいわれる。トラック業界のなかでも、廃小型家電の収集運搬を手掛ける事業者は多い。家電量販店などへの製品物流とともに「静脈物流」と呼ばれる分野に進出した事業者らだ。
そのうちの一つで近畿地方のトラック事業者は、効率的な回収方法を提言した行政評価局の見方をあえて支持する。事業者は、「廃小型家電は、何せ数が集まらない。リサイクル費用を消費者が負担するような仕組みにして自治体が手を引く。そのうえで市場化すれば、効率的な回収方法の可能性があるのではないか」。事業者のこうした提言は実体験に基づいている。現在、家電量販店の静脈物流を、リサイクル品の収集運搬としてではなく、トラック1台の貸し切り運賃として収受する形で請け負う同社。製品を購入する際に入れ替えの形で消費者から量販店に持ち込まれた廃小型家電を、数店舗分まとめて処理場まで輸送する。今は、2?トラック1台分の廃家電が毎日出る分量でしかないが、数百円程度の費用を消費者が負担して市場化すれば、量販店に持ち込まれる分量は増えるとみている。
行政評価局などによると、リサイクルできる有価物として扱われる廃小型家電はキロ当たり10円程度で売却されることも多い。産業廃棄物の収集なども手掛ける事業者は、「産廃では、有価物の価値が運搬費用を下回る『逆有償』という見方を行政がすることで、不法投棄対策としてきた経緯がある」と話しており、廃小型家電の有価物としての価値があまりに低いことがリサイクルの障害になっているとみている。
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