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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(369)リーダーシップについて(6)―1
2022年3月14日
リーダーとして大切な能力として、部下を育成するということがある。いわば優れた教育者という側面がある。
A社は創立22年、年商20億円、社員数150人、業種は運輸業の中堅企業である。A社の社長(50歳)は、勉強熱心で本をたくさん読み、会議室にはズラリと本が並び、研修ビデオもたくさんそろっている。私は、中期経営計画の作成ということで、A社の経営指導を行っている。
A社の成長要因はどこにあるか。創立20年クラスでも、社員数十人程度で小のままの企業が圧倒的に多い業界にあって、A社の成長力は素晴らしい。私が判断するに、A社リーダーの社長の経営力が卓越しているところに成長要因がある。
もちろん、一人ひとりの社員がよく働くからこそであるが、どこの企業でも程度の差はあっても、社員は働くものだ。従って経営者の差が大きい。
ところが、中堅企業としての地位を固めようとして成長の壁に直面している。年商20億円に近づくにつれて、利益が出にくくなってきた。人手不足の大波で、ザルで水をすくうが如く、入ってはやめのくり返しで、立ち往生している。採用経費を何百万円と投入し、大手求人誌にも年間契約して求人広告を行っても、入ってはやめのくり返しである。
社長は完全週休2日制実施を決意する。しかし、そのためには人手の充足が必須である。今までは、社長の経営力で乗りきってきたが、果たしてどうするか、正念場である。
A社社長「せっかく採用しても定着しない。完全週休2日制を目玉で人を採用しても、こうすぐやめられては、経費をドブに捨てているようなものだ。どうしたらいいだろうか。このままでは、成長したくてもできない」
A社の問題点
企業風土に問題がある。創業者のがむしゃらさ、野武士的迫力がうすれて、社長の顔色をうかがう幹部が増えてきている。
なぜ、社長の顔色をうかがうようになったのか。〝営業部解体事件〟が一つの原因をつくっている。営業部長、課長が退職して営業部が解体した。仕事上の責任を社長に追求されて、いたたまれなくてやめたわけである。実態は社長にやめさせられたわけである。
これで幹部は内心ビビってしまった。社長の前ではおとなしくしていないと、クビになると思い込んでしまった。イエスマンの幹部をつくる企業風土になっている。幹部が育っていない。
社長は優秀で、今まで企業の成長を引っ張ってきたので、幹部の育成について自ら愛情をかけていくということがなかった。外部の研修機関には積極的に送り込んでいるが、社長自ら手塩にかけるという形ではない。
経営能力のある幹部を育てるというより、自らの経営力で十分であったわけである。結果として社長がすべてで、組織というものが形成されないまま、成長の壁にぶつかっている。
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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