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物流ニュース
パートナーシップ構築の条件「一方通行でない関係」
2015年3月30日
コンタクトレンズ・ケア用品を手がけるシード(浦壁昌広代表取締役社長、東京都文京区)は、製品のピッキング、検品、梱包、配送という製品出荷の工程をヤマトロジスティクス(YLC)に委託し、二人三脚で物流の効率化に取り組んでいる。同社の製品出荷拠点である横浜の物流センターを取材し、両社にセンターの運用やパートナーシップ構築について話を聞いた。
シードが横浜市鶴見区のプロロジスパーク横浜鶴見に物流センターを開設してから7年になる。当初は約400坪の敷地だったが、出荷量とアイテム数の増大に伴い、現在は1400坪近くまで規模を拡張している。同物流センターの1日あたりの出荷量は、今年1月の例では製品点数換算で3万ピースから月曜日などの出荷が多い日で6万ピース。繁忙期には1日で10万ピースにのぼる。この膨大な量の出荷をデジタルピッキングシステムとマテハン、熟練した作業員が支えている。シードの桐山氏(左)と小山氏ヤマトロジスティクスの大橋氏(左)と井上氏
YLCメディカルロジスティクスカンパニー東日本メディカル主管支店営業推進課の大橋優治マネジャーは、「YLCの強みは、工業製品から医療品まで様々な荷種を扱うことで蓄積された、豊富なノウハウにある」と説明する。また、システム開発を自社で行うことで、顧客に応じたカスタマイズを比較的容易かつリーズナブルに提供することができる。同社の出荷システムを使用している企業は数百社にのぼる。
YLCでは、荷主の要望に応じて倉庫の選定から導入するマテハンやシステムの選択、運用方法などを提案していく。シードのケースでは、羽田空港に比較的近く、航空輸送の便が良いという理由から横浜の地が選ばれた。運用に際しては、「出荷日の翌日午前中着で届ける」とともに、「同じ出荷先の荷物はできる限り一つの梱包にまとめる」ことも条件だった。「一つの梱包にまとめることは、配送コスト削減の意識に加え、顧客である販売店が開封する手間を減らす意図がある」と、シード商品部の桐山武司部長は説明する。YLCではシードと協議のうえ、梱包箱を7種類用意し、製品の種類や量に応じて使い分けることで対応している。また、検品後に梱包する際に、箱を閉じない仮梱包の状態でプールしておくことで、追加オーダー分も一つの箱にまとめることが可能となっている。マテハンやシステムの構築に加え、運用方法に関しても、両社で相談しながら最適なやり方を模索してきた。
物流の効率化には、荷主と物流企業との緊密なコミュニケーションが必要不可欠となる。シードとYLCは、日常的な運用面を話し合う定例会を月1回開催していることに加え、システムの入れ替え、マテハンの導入検討、BCPセンター構想などの中長期的な打ち合わせを月に1、2回実施している。大橋氏は「それぐらいの頻度で打ち合わせしなければ、状況の変化に追い付くことができない」と話す。
定例会では、センターからの配送を担っているヤマトグローバルエキスプレスの担当者も交え、3社で破損や遅延といったクレームなどの情報を共有し、運用面での課題に対処していく。例えば、製品の破損事故では「どのタイプの箱に破損が多いのか」「どういった状況で破損したのか」といった情報を蓄積し、傾向を掴んで改善する。改善は梱包箱の改良といったハード面に加え、「小さな荷物をまとめ、大きな荷物とは別に発送することで破損・紛失を防ぐ」といった運用面でも実施している。
両社の交流は定期的な会議の場だけにとどまらない。昨年からは、互いの生産工場や集配センターの見学会を実施するなど、信頼関係を強化する取り組みを続けている。「製造過程を見ていただくことで、よりシード商品に対して親しみを持っていただければ」と桐山部長。
数年がかりで現在の良好な関係を築いてきた両社が考える「パートナーシップ構築のために必要な条件」とは何か。桐山部長は「コミュニケーションの頻度だけではなく、深さも大切」と指摘する。また、同部物流グループの小山智マネジャーは「荷主というと、仕事を与えているという考えになりがち。われわれも現場を経験し、その苦労は理解しているので協力できることは協力する」と加える。
一方、YLC神奈川メディカルセンターの井上栄一センター長は「一番は伝えることができる環境」と答える。「困った事があれば、相談できる関係」を築くことができれば、荷主と物流企業の双方から問題解決のアイデアを出し合える。井上センター長は「一方通行ではないところが、私たちが頑張ることができる理由」と強調する。
◎関連リンク→ ヤマトロジスティクス株式会社この記事へのコメント
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