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物流ニュース
白石倉庫 太宰社長 拠点分散し「立地」で対抗
2015年8月7日
2011年3月11日。東北地方を突如襲った大地震は、家族との穏やかな日常と、生まれ故郷ののどかな風景を一瞬にして奪い去った。失ったものは大きいが、気付かされたこともある――。
今年6月、倉庫業青年経営者協議会(倉青協)の第21代会長に就任した白石倉庫(宮城県白石市)の太宰榮一社長は、震災を通じて「本当の意味での〝人とのつながり〟を強く感じた」という。「倉青協の仲間の存在があったから、今、こうしていられる。私の人生において、どれだけ大切な組織か、改めて実感している」。会長就任の2年間は、温かい手を差し伸べてくれた仲間への恩返しの時間でもある。
震災の翌日から、同社に連絡が相次いだ。全国各地の仲間から、食料や燃料などが届けられる。当時の浅野邦彦会長(浅野運輸倉庫、滋賀県栗東市)の指揮のもと、仙台市内のホテルを毎週20室押さえると、倉青協会員から作業ボランティアが現地に送り込まれた。
荷崩れの復旧作業は連日に及んだ。作業期間終了後も「このままでは帰れない」と、自らの意志で戻ってきたスタッフもいたという。「建物の大規模損壊もあったし、二次火災も、落雷もあった。様々な困難に見舞われたが、会員の皆さんの支援に救われた」と振り返り、「倉青協には、同業者がピンチのときに駆けつける行動力と仲間への思いやりがある。今後もそのような会でありたい」と語る。
倉青協の活動をより多くの倉庫経営者と共有したいという思いから、太宰新体制では新たに広報委員会を立ち上げた。「自分たちの考えを周辺の業界の方々に理解していただくことが、結果的に倉青協が発展するベースになるのでは」と、日本冷凍倉庫協会やトラック協会、国会議員などの若い世代との交流の場を設け、国交省との意見交換も引き続き大切にしていきたいという。6月30日には歴代会長と現執行部の意見交換を開催。内部での議論も活性化する。
太宰社長はスローガンに「SOKO goes on!!~Talk About SOKO, More Deeply!!~」を掲げた。「倉庫業は先細りだという意見もあるが、そんなことはない。いくらWeb上でモノが流れても、モノが動く活動が必ずある。今後、保管量が減少したとしても倉庫の必要性がなくなることはない」。太宰社長が見ているのは、倉庫業の明るい未来と希望だ。さらに、分科会制度を復活させ、テーマごとに具体的な現場の実情について討論する場とするほか、企業交流会も従来以上に社員を中心とした構成にしつらえを変える。「皆でもう一度、倉庫業を見つめ直し、前へ進んでいく。そんな2年間にしたい」。
白石倉庫の115年の歴史を振り返ってみても、東日本大震災は会社最大のピンチだったという。戦後復興、高度経済成長期を経て100周年を迎え、第4の創業として施設拡張や企業の体質改善を行う中、震災は起きた。
今年4月以降を〝第5の創業期〟として、同社は新たな1歩を踏み出した。宮城県内に特化し、着々と拡充してきた物流施設は、現在12拠点。8月には白石蔵王営業所が稼働する予定だ。太宰社長は「2020年までに県内拠点を拡張、強化したい」と意気込む。
大型倉庫を1棟建てた方が、作業効率を高めるためには優れているように見える。そこをあえて分散させているのは、顧客のニーズに柔軟に対応できるという中小企業の強みを生かすためだ。「中小企業が大手に勝てるのは『立地』しかない。駅前に大規模倉庫を持っていても、お客様が仙台港でやりたいといったら、仙台港の近くに1000坪の倉庫を持っている事業者が選ばれる。経費はかかるし、非効率だが、あえて分散させている」。
物流大手はグローバル化の傾向にある。だからといって「地方の中小企業が同じことをやっていてはいけない。大手が自分でオペレーションできる施設を国内に作らないなら、私たちがローカル化していこう」と取り組んでいる。そして、より良いサービスを提供するためには、倉青協のネットワークが必要不可欠。国内の隅々までサービス網をめぐらせ、その地域でまたとない企業となること。地方の営業倉庫の一つの生き方として、太宰社長は示している。
同社では震災の経験から、新型のBOXフレコンを開発するなど新事業も展開。従来の丸型フレコンと比べ耐震面、安全面、操作性、保管効率に優れ、農水省・国交省の支援もあり、昨年11月には政府備蓄米の保管試験を実施。現在は宮城県内の2か所で数百トン規模の低温保管を行う。
幾多の困難を乗り越えた太宰社長だからこそ、できることがある。倉青協として、白石倉庫として、そしてここに「被災地として」を加え、私たちが見たことのない新しい倉庫業の姿を目にする日が待ち遠しい。
◎関連リンク→ 株式会社白石倉庫この記事へのコメント
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