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物流ニュース
石油製品輸送のターニングポイント 給油所の減少続く
2015年9月14日
ガソリンスタンドの減少や製油所の縮小で石油製品輸送の様相も変わってきている。これらに特化してきた事業者も「今が転換期」と、新たなビジネスモデルを模索している。
資源エネルギー庁が7月3日に発表した「揮発油販売業者および給油所数の推移(登録ベース)」によると、2014年度末の販売者数は1万6429。過去10年間で31.3%減(7494減)。給油所数は3万3510で、29.5%減(1万4074減)と、市場の縮小、拠点の集約化が見て取れる。
いまや個人商店やビルの1階に存在するような都市型の店舗、フルサービスの店舗は淘汰され、「店舗の大型化」「24時間営業」「セルフ式」がトレンドになった。これに呼応する形で、運送事業者は24時間稼働するようになり、一度に大量を運ぶため20kL以上のトレーラ型のタンクローリーが増加している。
これらの動きは、危険物の取り扱いにも大きな変革をもたらした。本来、消防法第13条第3項により、「給油取扱所及び移動タンク貯蔵所の所有者等が異なる場合は、それぞれの危険物取扱者が危険物の取り扱い作業を行わなければならない」とされているが、「給油取扱所における単独荷下ろしに係る運用について」(平成11年2月25日付消防危第16号危険物規制課長通知)の発出で、一定の安全対策を施した石油給油所に限り認められ、給油取扱所の従業員の立ち会いなしにタンクローリーに乗務する危険物取扱者が単独で荷下ろしを行えるようになったのだ。そこにDCD(ドライバーズコントロールデリバリー)という装置が登場したことで、タンクローリーに登って作業する必要がなくなり、また通信によって在庫確認ができるなど、IT化が進んだ。こうしたDCD搭載の大型車の需要はあるようだが、事業者の話では「給油所は依然として減少傾向にあり、安易に増車はできない。厳しい状況は依然として変わらない」とこぼす。
需要の落ち込みに対し製油所が多い、供給過多の現状を調整しようという流れが起きた。平成21年7月1日に成立した「エネルギー供給構造高度化法」によって、石油元売りは、複数で2以上の製油所の連携体制を構築し、そのうちの一つの製油所の原油処理能力を削減し、削減量分を当該企業間で融通する取り組みを行い、例えば、JX日鉱日石エネルギーと出光興産は2014年3月末、JXは室蘭製油所の原油処理を、出光は徳山製油所における原油処理機能を停止している。また、コスモ石油は今年10月をメドに持ち株会社体制へ移行すると今年2月に発表している。コスモエネルギーが「開発」、コスモ石油が「供給」、コスモ石油マーケティングが「販売」を担当。各部門を分社化することで、経営環境や事業環境の変化に事業単位で柔軟かつ迅速な業務提携がしやすくなるというメリットがある。
こうした動きに、石油製品を輸送する都内の事業者は「製油所が統合されれば、必然的に運送事業者も集約される」と危機感を募らせる。2020年までに年に2、3%程度石油需要は落ちるといわれているものの、石油製品を使う人はいるわけで、急激になくなるものではない。ただ、「輸送品質の向上のほか、石油元売りとの信頼関係が構築できていなければ、会社単位で仕事を切られる可能性もある」と指摘する。
そうなれば運送事業者も、1社依存ではなく、石油製品業界の中で特約店や商社など、荷主になり得る顧客を手堅く獲得しようとする。しかしそれにも限界が見えている。
そこで大手企業ではエネルギーの将来を見据え、水素やチッ素、LNG専用車の導入を進めている。一方、初期投資の難しい中小事業者は、アイデアで厳しい局面を乗り切ろうと試行錯誤している。ある事業者は経営資源を利用して、需要の薄い夏場の底上げをすることで年間売り上げの平準化を目指している。トラックは冬のピーク時を基準に保有しているため、夏場の固定費が負担となっていた。そこで、トラクターヘッドにシャーシをつけて、夏場の需要が見込める飲料などの配送を行っている。
このままではいけないと、必死にもがく経営者の姿がここにある。世の中の変化に柔軟に対応できるか。まさに生きるか、死ぬかの瀬戸際にある。決断の時は「今」だ。この記事へのコメント
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