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物流ニュース
買い物弱者を救え 全国で700万人
2016年1月7日
全国で700万人いる「買い物弱者」。過疎地だけでなく、大都市でも単身高齢者の増加を要因に問題となっている。官民が一体となってサービス向上に努めているものの、少子高齢化の流れは加速する一方で、解決策は見つかっていない。「買い物弱者」に対し、大手だけでなく中小規模の運送事業者からもサービスを提供する動きが出てきている。
経産省(流通政策課)は「買い物弱者は全国で700万人」と推定している。買い物弱者向けの宅配や移動スーパーなど、さまざまな取り組みが全国で展開されているが、「そういった取り組みでカバーされていない買い物弱者が700万人ということ」という。しかし、「補助については平成26年度補正予算に上げられているが、今後、どうするかは未定」という。
「買い物弱者」に対して運送事業者は、どのような動きを見せているのだろうか。ヤマト運輸や日本郵便は全国の地方自治体などと手を組み、宅配サービスなどを実施している。例えば、高知県大豊町ではヤマト運輸と組み、宅配サービスを実施している。窓口の大豊町商工会は、「2012年からヤマト運輸と提携し、『おおとよ宅配サービス』を実施している」と話す。地元の商店に買い物リストをファクスすると商品を配送するというもので、同商工会によると「利用できる店舗は10店舗。1か月で120〜130件ほどの依頼がある。利用できる店舗を増やしたいが、地元に店舗自体が少ないのがネック」とコメントしている。また、佐川急便はローソンと共同で「SGローソン」を立ち上げ、買い物弱者向けの宅配サービスを拡大中だ。
しかし、こうした動きは大手だけではない。中小企業の中でも同様のサービスがスタートしている。大阪府泉佐野市の関空運輸では、「市内の買い物弱者への〝ご用聞き〟を中心とした、きめ細かい宅配サービス事業による買い物機会を定期的かつ持続的に提供する。併せて、地域の福祉組織や自治体との緊密な連携による地域貢献を実施する」という。
運送事業者も取り組み始めている買い物弱者への対応だが、地元のスーパーマーケットなどが参入する場合が多い。奈良県五條市では地元スーパー「吉野ストア」(吉野郡大淀町)と提携し、買い物支援事業を展開している。五條市では「実証実験という位置づけだが、来年度以降も続けていく方針。他の業者とは提携していない」としている。
吉野ストアの安川光平社長(写真左)と移動販売責任者の吉田政己専務(同右)は、「きっかけは4年前の大水害。スーパーなどがほとんどない地域に水を販売しに行き、食品なども販売するようになった」という。「集合販売が5割、残りの5割がドアツードアの販売。宅配などのノウハウはなかったが、当初からこの事業で利益を出そうとは思っていなかったので、何とかなった」と話す。
「販売の際は、必ずお客さんに声をかけてコミュニケーションを取るようにしている。顔と名前を覚えてもらい、こちらも覚える。誰でもできることではなく、いい人材を集めなくてはならない」とも指摘する。「ウチの地域でも…という声をかけていただくことも多いが、なかなか難しいため、地元の運送会社などと協力できることもあるかもしれない」と話す。また、「最近、あのおばあちゃんの顔を見ない…ということがよくあるため、すぐに行政に情報を提供している」という。
同社では「利益を求める事業ではないが、今では心の交流という面も大きいのではないか。イベントがある際は『吉野ストアで』と言われることも多くなった。目先の利益だけを追求するなら、できない事業」としている。
スーパーや地元自治体と提携しなければならないが、市場規模は全国700万人。しかも少子高齢化社会が進む以上、今後も買い物弱者は増えることが予想される。
◎関連リンク→ 吉野ストア株式会社この記事へのコメント
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