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物流ニュース
引っ越し業界で料金下落 品質と価格競争
2016年6月1日
引っ越し業界で料金の下落が進んでいる。ネットで簡単に10社以上の見積もりを取ることができるためだ。最近では価格だけで選ぶ顧客が増えており、サービスの違いを見落としている場合が多いようだ。単価だけを追求すると品質は落ちるもの。価格競争が進めば安全・品質など本来重視されるべきものが削ぎ落とされていくため、決して良い風潮とはいえない。
会社勤めを機に2月末、大阪府のワンルームマンションから福岡県の寮に引っ越した20代女性。「何社か見積もりを取り、8万円を提示されたが交渉した結果、5万円を切る大手引越業者を選んだ。朝一番だったことと、業者が最後の1枠を埋めたかったという要因が重なって安くしてくれた。九州まで距離があるので、ここまで安く済むとは思っていなかった」と驚きを見せる。
大阪府の利用運送も手掛ける事業者は、「ネットで格安の引っ越し料金を提示する会社は、引っ越しシーズンにのみ参入する中小・零細の物流業者であることが多い。そのため、大手ほど研修が十分ではなく、消費者とのトラブルも多い」という。引っ越しシーズンには消費生活センターに「高価な家具を壊された」「作業員のミスで部屋が傷ついた」といった相談が寄せられるが、業者側の落ち度で家具を傷つけられたとしても、新品との交換は難しい場合が多いようだ。
実際に、引っ越しでのトラブルを経験した事例を紹介したい。3月に兵庫県の一軒家から東京都のマンションへ引っ越した20代女性は、20万円以上したアンティークコンソールテーブルの大理石製の天板を割られてしまった。引越業者の対応で怖い思いをしたという30代の独身女性は、「見積もりに来た営業担当者が、『他社でも見積もりをお願いしている』と伝えた後に態度が豹変した。今後、女性1人での対応はやめたほうがいい。他社の悪口も聞かされ、気分が悪くなった」と話していた。2人が引っ越しを依頼したのは、いずれも満足度ランキング上位の大手引越会社だ。
引っ越しが最盛期を迎え、各社はさまざまなサービスやキャッシュバックなどのキャンペーンを実施している。しかし、安さを打ち出す裏には、過当な値引き競争に伴って賃金の低下、人材不足という問題が連鎖し品質の低下につながるのではないだろうか。質と利益をどのように両立させていくか、引越業界、ひいてはトラック運送業界の難しさだといえる。この記事へのコメント
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