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物流ニュース
SAS検査の必要性高まる 事故後では手遅れ
2016年7月18日
健康起因事故が注目される中、ヘルスケアネットワーク(OCHIS)はこのほど、平成27年度SAS検査の実績調査概要を発表した。作本貞子副理事長は「昨年度は一昨年度に比べ大きな変動はなかったが、毎年、検査に関心を寄せる事業者が増えている。運送業の安全対策の一つとして、ぜひSAS検査を導入してほしい」と説明する。
運転中の急病で事故を起こすドライバーが問題視されたことで、交通事故とSASの因果関係について認知度が上がっている。高血圧や動脈硬化が脳卒中や心筋梗塞を引き起こすとして、SAS検査の必要性が高まっているようだ。
今回、発表した資料によると、トラック関係者のSAS検査実施者数は、8794人(男性8459人、女性335人)で、実施者の平均年齢は45.3歳。また、パルスオキシメーターの結果によると、実施者のうち3145人(35.8%)が精密検査の対象に。D判定者のうち、重症とされるD+判定者は、634人で全体の7.2%だった。D判定者とD+判定者の割合は、実施年齢が高くなるほど多くなる傾向にあり、実施人数の最も多い40代のD判定者とD+判定者は3465人中1235人となった。
また、体格指数(BMI)が25以上の肥満者の割合は、8757人中2904人(33.2%)だった。40代以上の肥満者では、各年代の要精密検査率は50%を上回った。D判定者の割合はBMI25未満が25.3%、BMI25〜30が51.4%と非肥満者の2倍となり、BMI30以上では71.9%と急増するうえに、D+判定者の割合も高い。
昼間の眠気の自覚症状から、SASの可能性を調べる「ESSテスト」と、D判定者数の関係性について調べたデータでは、同テストで11点以上の回答者が「自己認識によるSASの有所見」とみなされる。11点以上と10点以下(自己認識なし)を比べると、自己認識のない方が、自己認識のある方よりD+判定者の割合が上回っていた。
今回の調査では、初めて医療機関での受診・治療状況のアンケートを実施し、120の医療機関から回答があった。作本副理事長は、「SASでありながら自覚症状がない、経済的な理由などで治療を拒否するドライバーがいることが分かった。職業ドライバーとして健康管理は第一の義務。SAS治療で、高血圧が改善されたドライバーもいる。管理職の方はドライバーに向けて、『精密検査を受けてこそ安全運行につながる』と、説得していただきたい」と話す。
健康管理への意識不足や、健康診断の有所見者への対応の不徹底が顕在化した結果が、近年の健康起因事故急増の背景にあるといえる。ドライバーの体調把握を徹底し、小さな異変をも見過ごさない安全風土の醸成が不可欠だ。
SASドライバーはブレーキのタイミングが遅いなど、さまざまなリスクを抱えている。「事故後に検査を受けるようでは遅い。今年はバス事故の影響で、問い合わせが多い。労働条件が厳しい運送業だからこそ、ドライバーの身体をコントロールし、ケアしていく必要がある。会社を守るだけでなく、ドライバー自身の人生を棒にふらないために、一歩踏み込んだ対策を行ってほしい」と話した。
◎関連リンク→ NPO法人ヘルスケアネットワーク(OCHIS)この記事へのコメント
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