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息子に継がせられない 閉鎖・譲渡考える運送経営者
2011年3月31日
日本経済は厳しい状況が続き、いつになれば景気が回復するかわからないため、運送業界でも将来への希望をなくす事業者が少なくない。後継者がいても後を継がない状況で、会社の閉鎖や譲渡を検討する事業者も存在するようだ。
大阪府松原市に本社を構える事業者は、昭和の免許制時代に運送免許を取得して数十年が経過する。荷主には化学薬品会社や海貨業者、紙製造会社、物流会社などがおり、ピーク時には車両15台、従業員15人以上で、約100坪の保管庫兼荷捌き場を保有していた。しかし、規制緩和に伴う過当競争で、荷主企業も「長年の付き合いはこれまで」として、新たな運送事業者との取引を行うなどし、同社の直接取引の荷主は減少。景気低迷による物量減少や運賃低下も加わり、車両台数は10台以下に。経営者は長男を後継ぎに考えていたが、先行きの不安から長男に運送事業を継がせず、民間企業へ就職させた。
同社は現在、さまざまな問題が重なり車両5台、従業員4人に減少。いよいよ事業閉鎖や従業員4人を引き継いでの事業譲渡を考えている。
同社社長は「現在の荷主は化学薬品の企業と海貨業者などだが、毎日、運送事業者からのもらい仕事で車両を動かしている。昨年も事業閉鎖を考えていたが、長年勤めている従業員のことを考えれば閉鎖できなかった」とし、「自分自身は借金もなく、今の状態で閉鎖や譲渡しても何ら問題はない。現状のままでは荷物の確保が困難となり、事業を継続していけない。苦肉の策として、会社を譲渡する方向で数社と交渉を行う状態だ。従業員の気持ちも考慮して、もっとも内容、考えが合う運送事業者への譲渡を考えている」と話す。
また、「時代の流れとは言え、運送事業は現在、2トン、4トン車で1か月の売り上げは60万円以下で、適正な事業運営ができるわけがない。こんな業界に息子を継がせても、絶対に継続できないと判断し、民間企業へ就職させた。かつてのように認可運賃が存在し、コンプライアンスを行った上でのサービス競争であれば生き残りも図られるが、ルールなしの過当競争では戦うことも困難で、中小・零細企業の運送事業者は生き残れない」と胸の内を語る。(佐藤弘行)
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