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なお「コスト優先」か 貨物運送と廃棄物 静脈の優良事業者選び
2014年7月9日
動脈と静脈に例えられることも多い貨物運送事業と廃棄物事業。ともに近年、厳しい法規制のなかでの過当競争が続いているが、貨物運送は事故防止による安全、廃棄物は適正処理による環境対策に秀でた事業者が生き残る時代となった。トラック事業のGマークと同様に、廃棄物業界も従来の優良性評価制度を発展させた形の優良産廃処理業者認定制度を平成23年からスタートさせているが、なかなか認定の取得に弾みがつかないのも実情。そうしたなかで優良事業者を後押しする?さらなる一手?として昨年、国は環境配慮契約法に基づく六つ目の契約類型として産業廃棄物の処理を追加。「価格に加え、環境性能も含めて事業者を選ぶ」というのが同法の趣旨だが、浸透度が低いこともあってか入札に参加した事業者からは困惑の声も聞かれる。
改正された同法の基本方針に沿って契約しなければならない産業廃棄物は当面、国と独立行政法人が排出元となるものが対象。最低価格落札方式(あらかじめ設定した価格の範囲内で最低価格を入札した者を落札者とする)という従来の一般的な手法を変化させ、価格だけの選定を回避することで優良な廃棄物事業者との契約を促すのが狙い。状況を見ながら今後、現時点では努力義務としている地方公共団体などにも広げていきたい考え。事業者の優劣を判断する材料に使われるのは、先にスタートしている優良事業者認定の評価項目における取得ポイント。温室効果ガスの削減計画など環境配慮への取り組みや、財務体質の健全性など優良認定の適合状況をはじめ、動脈のトラック事業者も関係が深い収集・運搬部門では「運転・車両管理」「低燃費・低排出ガス車の導入割合」なども評価される。「裾切り」と呼ばれる方式で、例えば「満点の60%以上の点数を獲得した事業者」でなければ入札に参加できず、結果として環境性能に優秀な事業者に相応の値段で処理を頼めることになる。
この方式への軌道修正は昨年3月からだが、「広報に要する時間的な問題も踏まえれば、実際には今年4月からの契約が初年度になるとの見方が一般的だった」と広島県で廃棄物事業を手掛ける事業者。同社は今春、新方式となった廃棄物処理契約の入札に参加したが、不調に終わった。
排出元である国や独法が取得ポイントを60%としたことで数社が応札し、そのなかで同社が最安値だったものの最低落札価格を上回っていたためだ。「安全かつ、確実な産廃処理を委託するための制度といううたい文句とは違い、結局はコスト優先でしかない」と同社社長。再入札では基準が50%に引き下げられ、落札事業者が決まったという。
環境省によれば「(60%など)切り方は委託機関の判断によるもの。例えば環境省なら会計課であったり、地方にもそれぞれ調達部署があると思うが、競争性を確保しつつ、より環境にやさしい事業者を選ぶように努力してください…ということ」(総合環境政策局環境経済課)と話し、手を挙げる事業者がいる範囲で入札資格の線を引くしかないとの見解。「一般論」と前置きしながら、広島県でのケースについても「期待される応札がなかったために採点から見直して、さらに参加事業者が多くなるようにすることは十分にあり得ること。これまでは金額だけで選んでいたものに環境面も含めることで前進している」とフォローする。
トラック事業が招く交通事故も社会に大きなダメージを与えるのは間違いないが、廃棄物の場合も問題は深刻だ。不法投棄をはじめとする不適正な処理が発生すれば水質汚濁、土壌汚染などの環境破壊から周辺住民への健康被害へと拡大し、収束に要する費用や時間は膨大なものになる。それだけに近年、処理過程における安全最優先が叫ばれてきた。
インセンティブが用意されたGマークと同様に、取得に弾みをつけるために優良産廃認定制度でも取得事業者には許可の有効期限を5年から7年に延長することや、許可証に「優良」と記載されるなどの優遇措置が設けられている。行政当局では環境配慮契約法に基づいて事業者を選ぶことと、優良認定事業者数を増やすことは別次元のものだと説明するが、まずは国などが先頭を切って制度を厳格に運用する必要がある。「予算も限られている」(同課)という現実に間違いはないが、優良認定をめざす事業者のモチベーションを下げないことも大切だ。Gマークにも共通することかもしれない。
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