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    営業職、「置く」「置かない」 それぞれに理由が

    2017年11月17日

     
     
     

     運送業界では、営業職を置いていない事業者が多く存在している。営業職を置きたくても置けない事業者や、必要ないと考えている事業者など、それぞれに理由がある。だが、企業にとって営業職は、会社の売り上げを作り出すうえで大切な存在であり、会社の商品やサービスの認知度を高めてくれる存在でもある。営業職を置く運送事業者に、営業に関する取り組みや考えを聞いてみた。



     「企業を発展させていく過程において、営業は絶対に欠かすことができない」と断言するカーレントサービス(東京都大田区)の保坂高広社長。同社では営業部門として、市場開発部とCRM推進部の二つのチームを置いている。市場開発部は既存客向けの営業として、新しいサービスや年に1、2件立ち上げている新規事業を訴求する。一方、CRM推進部は新規を取り込み、ウェブマーケティングから流入してくるクライアントのクロージングといった営業を行う。この体制は保坂社長の就任後、事業の維持と拡大のために作られたもので、4月に作られた新たな組織のなかに両部が組み込まれた。「総合物流」「重量物・大型機械取り扱い」「精密機器取り扱い」「廃棄処理」「国際物流支援」「オフィス移転」といった六つのサービスが同社のリソースで、これを生かしきれる範囲内で事業領域の拡大を図っている。同社では「未来を作る。世界へ挑む。日本を代表するグローバルカンパニー」を目指すというビジョンを掲げており、実現に向けた戦略を立てている。営業はこの戦略を実現するためのツールなのだ。保坂社長は営業を持たずに会社の発展を図るのは「サッカーでいえば、シュートを打たないで試合に勝とうとすることと同じ」として、「事業を継続していくうえで、営業を欠かすことは考えられない」としている。

     2年前に営業企画部を開設した秋元運輸倉庫(秋元伸介社長、東京都港区)では現在、大滝真理シニアマネジャーのもと、西田勝紀主任と小畑直也氏の若き2人を営業マンとして育てている。同社が営業職を置いたのは、会社の発展には必要不可欠だと判断したから。大滝氏は「物流業や倉庫業では実際のところ、仕事を待っているだけという事業者は少なくない」と話す。「私どももこれまでは、既存の取引先から提案されてはじめて新しい仕事に手をつけるという状況だった」とし、「それだと井の中の蛙状態で、会社が発展していくことはない」営業企画部が設置されて2年が過ぎた。現在、この部署に所属している西田氏と小畑氏は、もともと営業職として入社したわけではなかった。育成を兼ねてテスト的に2人に白羽の矢が立てられた。現場から事務方の業務を経験したあと、新設された営業企画部に配属された2人は当初、戸惑いを隠せなかったものの、手探り状態で営業ノウハウを学び、今では少しずつやり甲斐を感じ始めている。西田氏は「自分の役割は、取引先とのつながりを保つことと、新たな取引先と関係を築いていくこと。会社が時代の流れに取り残されないための重要なポジションとしてやらせてもらっている」と話す。一方、小畑氏は「今は、取引先が望んでいるサービスや需要を会社に持ち帰ることに専念している」という。若い2人が営業マンとして成長することが出来るのは、会社全体でバックアップしていることが大きい。大滝氏は「物流業界で一番大変なのは社内交渉。以前と違って、当社では営業をサポートする機運が高まっている」と話す。同社では、営業を設けたことで、「少しずつ新しい取引先や仕事が増えていることに加えて、業務部門や管理部門など会社全体の活性化にもつながった。営業は会社全体の刺激剤となった」としている。

     岐阜梱包(堀部友里社長、岐阜県揖斐郡大野町)で営業を担当している山本浩之部長に、営業活動の際に重視していることを尋ねると、「お客様からしっかり覚えていただくこと」「お客様と仕事の場以外でも話し合えるチャンスを逃さないこと」と答えた。山本部長は、協力会社や顧客との付き合いを欠かさない。多忙な時期でも関東や関西からの交流会や懇親会の誘いに応じている。こうした活動を経てつながった仲間や、協力関係にある荷主とはSNSを活用し頻繁に情報交換を行っているという。なお、近年は趣味の盆栽の画像をSNSに投稿、または贈答しているという。行動の成果は仕事内容のほか、設備にも見ることができる。同社敷地内には中庭が併設されている。これは部長の手によりデザインされ作られたものだが、材料の大半が付き合いのあるメーカーなどから譲り受けている、いわばつながりの結晶だ。部長は「仕事とはまた別の活動となるが、こうして人とつながる活動には自分を引きつけて離さない楽しさがある。社長からも社内外の活動を応援していただいており、これからも一層、交流の輪を広げ、会社へも成果を還元していきたい」と話す。

     恵武急便(岐阜県恵那市)の山田有恒社長は、「当社では、私や社員が仕事を探しに、営業活動へ行くという形はとっていない。お客様から仕事を提案していただき、対応する形をとっている」と話す。営業を持ちかけなくても配送を依頼される背景には、同社のドライバーが日々の仕事を荷主から評価されているという実績がある。山田社長は「採用選考で人柄を最重視し、たとえ未経験でもドライバーとして採用できる体制を整えている。前職は様々だが、事故防止以外にも現場でのコミュニケーションやマナーの面で気を配れるドライバーが多く、お客様からの評価は高い。こうした仕事振りが強い信頼へとつながり、受注の継続や新たな仕事へとつながる」と強調する。社長は、ドライバーのポテンシャルを発揮させるため、負担がかかるような配車を避け、出発前や帰ってきたドライバーがリラックスできるような空気を心掛けている。働きやすい環境づくりは新たなドライバーを呼び込む手助けもしており、ドライバーが仲間や後輩を紹介するといったケースが後を絶たない。なお、社長は「直接的な営業行為を行わない理由には地域性もある」と話す。同社をはじめ、地域の事業者同士が、ある程度決まった活動範囲を持ち、把握し合っているため、営業活動をする利点が薄いのだという。実際に同社では、他社の得意先からの依頼などは受けないように注意している。社長は、「会社の自助努力を妨げる行為であるかもしれない。しかし、会社同士お互いを尊重する関係は、強いネットワーク、協力関係の構築にもつながり、それは、各会社の強みにもなる」と話していた。

     営業職を置いていないミサワ運送サービス(妹尾康義社長、東京都府中市)では、「会社の規模的に営業を置くことは、現時点では考えていない」(妹尾社長)として、「私が営業を行うとともに、ドライバーにも営業を兼任してもらっている」という。そのため、同社では年に数回、研修を兼ねた営業会議を開き、ドライバーに基本的な営業の仕方をレクチャーするほか、会社案内のパンフレットや宣伝用の社名入りアイテムなどを配布している。妹尾社長は「ドライバーの皆さんには訪問する先々で、積極的に利用者への声掛けをしてもらっている」とし、「少しずつではあるが、新しい仕事の依頼や新たな利用者を開拓することができている」と話す。1974年に設立された同社は、81年に赤帽ミサワ運送として開業し、89年に現在の社名に変更。現在、従業員60人、車両は小型貨物(1t・2t・4t)営業車20台、軽貨物営業車35台を有し、チャーター輸送をはじめ、航空貨物転送代行業務、ルート配送、JR・新幹線を利用したハンドキャリーサービス、引っ越し、特殊輸送業務など年中無休で対応する。

     「営業をするということは、会社を安定させるということ。社長や営業担当者が頑張れば、従業員全員が幸せになる」と話すのは、全国で人材育成・教育研修を手がけるインソース(東京都千代田区)の舟橋孝之社長。物流業界では荷主を取った・取られたということを嫌い、まったく営業をしないスタイルの事業者も少なくないが、「会社は毎年どんどん作られている。それだけ多くの荷物が生まれているということ。そういう先なら、仕事を取らなくていいだろう」という。「営業はだれにでもできる。土下座をする必要もなければ、男気を潰す必要もない。営業というのは、お客様に新しい価値を作って届けること」と舟橋社長。そして、「そのためには自社の価値を知ることが大切。価値を知れば勝負ができる」と指摘する。「だれにでもできる消極的な営業として挙げるのはホームページ。ここに得意な荷物や配送地域、料金などの情報を入れておく。あらゆる輸送情報は検索されており、特に、変わったものを運んだ経験はアピールポイントとなる」と同社長。「当社は14期連続で増収だが、取引先の半数はホームページがきっかけ。それだけ効果が大きいということ」と話す。「次は携帯に100人の友人が登録されているなら、『仕事ありませんか』と定期的にメールをする。必ず反応はある。100通のメールを送れば、最低でも1%の問い合わせがあるだろう」と説明。「営業とは論理、ロジック。一度電話をして断られても、6回電話をかけると『一度話でも』ということになる。どれだけ電話をかけたかをカウントしておけば、野球の打率のように成功した割合がわかってくる。そして、担当者に会えたら覚えてもらうことが大切。会えても、すぐには仕事には結びつかない。それでも、年4回ぐらいは会って顔を覚えてもらう。お客様にニーズが生まれれば、『一度使ってみるか』となる」営業では「目立つことも大切。トラックを真っ赤にして目立たせるのもいいし、格好いいユニホームを新調してもいい。専門の営業担当者を置かないのであれば、ドライバーが定期的に得意先に顔を出していけば、いつか結果は出る」と舟橋社長。「そして大切なのは、価格競争は最後ということ。最初は品質やこだわりを理解してもらい、無茶な要求は飲まない。低価格な運賃ではドライバーや会社が疲弊してしまう」と指摘する。

     
     
     
     

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