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ブログ・野口 誠一
第243回:頑張りが傷口広げる
2009年11月6日
真面目に懸命に努力しても、結果が伴わないことは世の中にいっぱいある。経営もそのひとつかもしれない。むろん努力は必要だが、それだけで十分といかないところに経営の難しさがある。
何よりも、正しい方向に向けた努力でなければ意味がない。赤字体質の事業や、斜陽化しつつある事業に、いくら努力を傾注しても、報われる可能性は低い。大手企業ならM&Aや選択と集中という手もあるが、それができない中小企業は、どうしても汗と努力の量に頼らざるを得ない。が、その頑張りがかえって傷口を広げ、裏目に出るケースもある。今回からそうした一例を紹介しよう。
Dさんは東北の片田舎に生まれたが、小さいときに両親を事故で亡くし、祖父母に育てられた。高校の成績は良かったが、家が貧しかったため大学をあきらめ、職業訓練校に入って塗装の基礎技術を身につけた。
「手に職をつければ一生食いっぱぐれなし」「稼ぐに追いつく貧乏なし」という祖父母の教えに従ったのである。この教えはDさんの人生哲学となっていくが、皮肉にもそれが悲劇を招く。
昭和50年、訓練校を卒業したDさんは、仙台の中堅建築会社に就職、ビルや建物の外まわり塗装に従事していく。このサラリーマン生活が10年ばかり続いたところで独立、ささやかながら自営業として新しいスタートを切った。いわば一人親方の職人である。
それから5年間、Dさんはしゃにむに働いた。職人に土・日なしとばかりに働いた。その甲斐あって、サラリーマン時代に比べ大幅に年収が増えた。Dさんはそれをマイホーム資金としてコツコツ蓄えていく。そのままいけば、Dさんは一職人として幸せな人生を送ったであろう。そしてそのことに不満もなかったであろう。が、人生は筋書きのないドラマである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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