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ブログ・向井 蘭
【第30回】会社が解散する場合の解雇(1)
2010年5月24日
物流運送は、経営不振に陥り多額の負債を抱えており事業継続が不可能となり、事業を廃止し解散することとしました。しかし、物流運送の一部門である大型トレーラー部門は何とか利益をあげており、独立採算して事業を継続できそうです。そこで、物流運送は、別会社に大型トレーラー部門の営業を譲渡することとしました。別会社である譲受会社は賃金等を切り下げた労働条件であれば当社の従業員の一部を採用することを了解したため、物流運送は、希望者を譲受会社に就職斡旋することとしました。
ところが、物流運送の従業員で譲受会社に就職を希望したが、賃金等を切り下げた労働条件では合意できないとした従業員がおり、譲受会社に就職することができませんでしたが、やむなく物流運送は、事業廃止に伴い全従業員を解雇しました。当該従業員は、物流運送に対しては解雇無効の訴え、譲受会社に対しては雇用契約は承継されているとして訴えを起こしました。この訴えは認められるのでしょうか?
かりに当該従業員が労働組合員であった場合はどうでしょうか?
まず会社は、株主総会決議により解散することができます(会社法第471条3号)。その後清算人が清算手続を行い、清算手続が終了すると法人格も消滅し雇用契約も終了します。もっとも、清算手続終了前に会社は従業員を解雇することが一般です。
前回までの連載では、業績不振による整理解雇が有効であるためには、これまでの判例の積み重ねから整理解雇の4要素を考慮されることが必要であると述べました。では、会社解散の場合も整理解雇の4要素を考慮し、裁判所は解雇の有効性を判断するのでしょうか?
使用者は、憲法上職業選択の自由から営業の自由を有しているわけですから、会社を解散し営業を終了させる自由も有していると解釈されています。会社を解散するのに解雇が無効では会社を事実上解散することができなくなるからです。これらを勘案し、裁判所は、会社が解散する場合の解雇についてはほとんど有効と解しております。たとえ、会社解散が労働組合解散の目的のためのものであっても、裁判所は会社解散が偽装解散(新会社を設立し、新会社で実質的には同一営業を引き継ぐこと)でなければ、解雇を有効と解しております。
この点が整理解雇と大きな違いです。この記事へのコメント
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筆者紹介
向井 蘭
弁護士
労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。 モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。 経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで。
URL:http://www.labor-management.net/ -
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