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ブログ・野口 誠一
第313回:「倒産病」3段階の症状
2011年8月4日
私の倒産で家族の運命は狂ってしまったが、それでもそれぞれに新しい人生を歩みはじめた。私だけが相変わらず閉じこもりでどうにもならない。羽根を休めていると言えば聞こえはいいが、翔ぼうにも羽根が動かないのである。それが「倒産病」である。倒産者には共通して3段階の症状があらわれる。
第1段階は「放心症状」である。1日中ぼんやりしているだけで、筋道を立ててものごとを考えることができない。そのくせ、心のどこかに奇妙な解放感もある。おそらく手形や資金繰り、借金の言いわけなどからの解放感であろう。
しかしその一方で、名状しがたい焦燥感も湧いてくる。「このままではいけない。なんとかしなければ」という焦りである。が、何をどうしていいかなどまるでわからない。こうした相反する感情が心のなかで渦を巻くが、いっこうにおさまりがつかない。倒産者はその感情の波に翻弄され、もみくちゃにされるだけである。
第2段階は「虚脱症状」である。これはかなり強烈な「うつ」状態を伴う。これにやられるとまず気力が食いちぎられる。何をする意欲も気力もなくなり、新聞すら読むのが面倒になる。ついでに生きているのも面倒になるが、対処療法はなく、じっとこの季節が通りすぎるのを待つしかない。
第3段階は「孤独症状」である。この段階に入ると、もはや地獄そのものと言っていい。しょせん、人は1人では生きていけない。しかし、倒産者を訪ねてくるもの好きなどまずいない。あれば債権者と決まっている。
といって、自分のほうから世の中に出て行けないのが倒産者の哀しい心情といえる。債権者には申し訳ないし、怖いし、世間が寄ってたかって「ざまあみろ」と嘲笑しているようで、玄関を一歩も出られない。倒産者はこの孤独がいちばんこたえる。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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