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ブログ・野口 誠一
第314回:「孤独地獄」は危険な季節
2011年8月11日
前回、倒産者を3段階にわたって襲う「放心」「虚脱」「孤独」の3症状を紹介したが、孤独地獄だけは家族の愛情なくしては乗りきれない。が、倒産者の6割は離婚、一家離散という現実ではそれも難しい。
たとえ同居していても、このときとばかりにいじめにかかる奥さんもいる。「男のくせにだらしない」「いつまでぶらぶらしているの」などと言われたら、二重の孤独に陥る。
羽振りのいいときに家庭をかえりみなかったり、愛人をつくったりした報いとは知りつつも、いや知るだけになお、「この野郎」とも言えず、孤独感はいよいよ深まってゆく。
そんなとき、「これじゃ死んだほうがましかな」と、アタマの片隅をスイッと死の影がよぎってゆく。人と生まれて、いちばん身近な奥さんに相手にされない、評価されないほど辛いことはない。その分、どうしても死神とたわむれる時間が多くなってゆく。孤独地獄は危険な季節と言っていい。
案の定、私にもその季節がめぐってきた。が、私がどうにかこうにかその季節を切り抜けられたのは、家族があたたかく支えてくれたからである。もしも家族に見放されていたら、私は早々に死神に背中を押され、あの世へ旅立っていたに違いない。
6畳2間暮らしに転落しても、家内はグチひとつこぼさなかった。それどころか、「お父さん、家が狭いっていいことですよね。子どもたちの寝顔が見られますよ」と、とんでもないことを言う。私の気持ちをラクにさせようという言葉である。その言葉に甘えるつもりは毛頭なかったが、心も体も鉛のように重く、ピクリとも動かない。それが倒産地獄である。私はなまじ会社が儲かっていただけに、そして放蕩が長かっただけに、同じ倒産でも人の何倍も倒産地獄の季節が長かったと言っていい。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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