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ブログ・経営承継支援
第1回「株式譲渡でM&Aを行う際の税務上の留意点」
2020年2月12日
皆様、こんにちは。経営承継支援の向 洋平です。
中小企業M&Aで圧倒的に多いのは「株式譲渡」です。そこで今回は、「株式譲渡でM&Aを行う際の留意点」を解説します。
まず、株式譲渡の場合、オーナーへ支払われる譲渡対価は、①株価のみで受け取る場合と、②株価と役員退職慰労金を組み合わせて受け取る場合の2パターンがあります。①の場合、株式の譲渡益(譲渡対価ー取得原価)に対して20.315%が課税されます。
②の場合には、譲渡対価を株価と役員退職慰労金に分けます。
後者については「退職所得控除(退職金のうち課税されない一定額)」がありますので、組み合わせ方によっては、譲渡側は手取り額が多くなり、譲受側は初期投資額が抑えられるという双方にメリットあります。
株価1億円(取得原価2000万円、退職金5000万円、退職所得控除5000万円)の場合、①の税金は、(1億円ー2000万円)×20.315%≒1600万円です。②は、(1億円ー5000万円ー2000万円)×20.315%≒600万円になり、譲渡側は手取り額が1000万円増加し、譲受側は初期投資額が5000万円削減できます。
上場企業以外は、原則、譲渡制限会社ですので、株式譲渡は当事者だけの合意のみならず、「株式譲渡請求→株式譲渡承認決議・通知→名義書換請求→株主名簿の変更」という会社法上の手続きまでしなければ、有効な株主変更とは言えません。過去の株主異動・変遷が適法なものでない場合、株主が確定できず、株式譲渡でM&Aができないという結果になりかねません。
最後に、M&A検討開始前であれば、株式の異動は税法上の評価額で取り引きすれば問題ないですが、M&A検討開始後は、税務上の株価を原則使えず、M&A株価を基準に考えます。このため、事業承継の選択肢のうち、M&Aを検討する場合には、早めに株主の整理に取り掛かることが肝要です。◎関連リンク→ 株式会社経営承継支援
向 洋平
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筆者紹介
経営承継支援
価値をつなぐ、想いをつなげるM&A
中堅・中小企業の円滑な事業承継のためのコンサルティング業務と中堅・中小企業の継続・発展に資するM&A仲介・助言業務が得意。
https://jms-support.jp/向 洋平 (取締役 経営企画部長兼管理部長/税理士)
明治大学商学部卒業後、税理士事務所で税理士補助業務に従事。2004年、大手M&A専門会社で多数のM&A案件及び内部統制体制構築業務に従事。2009年、立命館大学大学院を修了、会計事務所系コンサルティング会社にて日中クロスボーダーM&A実務に従事。2015年、当社にパートナーとして参画。その後、当社福岡事務所長に就任。2018年、執行役員に就任。2019年より現職。専門は、経営計画、事業承継(相続/MBO/M&A)、組織再編、コーポレートファイナンス、資本政策に関するコンサルティング業務。 -
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