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ブログ・馬場 栄
第12回:法的書面の整理
2013年10月24日
前回は、脳・心臓疾患の労災対策として、血圧検査の定期的実施をお伝えしました。今回は法的側面の整備についてお話しします。
仮に血圧検査の結果、血圧が高いドライバーに皆さんは、どのような対応を取りますか。「帰らせる」「賃金は支払わない」などがお答えではないでしょうか。また、春から始まったアルコールチェックも同様で、帰らせ、支払わないことが、法的に認められるのでしょうか。
会社と社員との間でルールもなく、このようなことを行えば、法的に賃金の支払い義務は免れられないでしょう。会社側には安全配慮義務が課せられています。脳・心臓疾患の可能性がある社員から労務の提供を拒否しない場合、事故が起きれば損害賠償に発展しかねません。だから、その危険がある社員からの労務の提供を拒否することに合理性はあります。しかし、賃金を支払わないのなら、さらに高度な合理性が求められます。
業務の提供を拒否し、賃金を支払わないとするのなら、就業規則の安全管理規定で血圧検査やアルコールチェックの条文を整備する必要があります。また、就業規則だけでは不測の事態も想定されるので、個別同意を取ることがベストでしょう。
内容は拒否した場合の処分、賃金、賞与に至る細部まで記載しなければなりません。規定を整備し検査を実施しても、それでも労災事故が発生しない保証はどこにもありません。そこで、民間保険によるセーフティネットを張ります。具体的には、損害保険の労災総合保険で対応するのですが、この保険に加入している企業は50社中1社くらいです。
皆さんは自動車保険に加入していますよね。それは自賠責保険だけでは、万一の場合賄えきれないからではないでしょうか。労災総合保険も同じです。労災保険だけで民事の争いが起きた場合、賄うことは不可能です。就業規則改正で大事なことは、法的側面を理解し、それでも不測の事態にまで踏み込んだ専門家からのアドバイスが必要でしょう。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄) -
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筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
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