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ブログ・馬場 栄
第15回:注意すべき文言
2013年12月5日
これまでも、就業規則が会社を守る重要なツールであることをお伝えしてきました。今回はその中でも注意すべき文言をお話ししましょう。
ある経営者から、社員が会社に損害を与えたので、懲戒解雇したいがどうだろうかと相談を頂きました。ある社員は上司の命令を無視し、独断で判断してミスを犯したため、経営者からすれば弁明の余地はないとの判断です。しかも、その損害額は1000万円近くになるとのこと。そこで、私が気になったのは、この会社の就業規則の中で「著しい損害を与えた場合は、懲戒解雇とする」と言う文言でした。
一般的な会社の就業規則でも、懲戒解雇の欄には同様のことが書かれています。では著しい損害の金額は、いくらなら妥当なのでしょうか。仮に、この会社の売り上げが10億円だったとします。そのうち1000万円の損害であれば、対売り上げは1%となります。世間的に見た場合、1%の損害が著しい損害だと判断されるでしょうか。経営者からすれば、対営業利益でみたら、対経常利益でみたらという発想になるかと思いますが、一般的な尺度からすれば、やはり売り上げと言うことになるのではないでしょうか。
就業規則は唯一、会社を、経営者を守る大切な武器です。ですから、会社に不利益となるような文言は絶対避けるべきなのです。例えば、先ほどの文言も「会社に損害を与えたら懲戒解雇する」とすれば、どうでしょうか。損害を与えたかどうかという事実だけが争点になり、金額の大小は関係なくなります。解雇する場合、高度な法律要件を満たさなければなりませんが、少なくとも著しいかどうかの争点はなくなります。また「重大な」という文言も同様です。「故意または重大な過失」とすれば、故意はともかく過失は重大かどうかの判断が必要となります。
ですから、私どもの就業規則では、「著しい」とか「重大な」などの文言を、会社にとって不利とならないよう使い分けております。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄) -
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筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
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