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ブログ・馬場 栄
第23回:就業規則と労働契約の関係
2014年3月27日
会社と社員との間の基本的なルールを定めたものが就業規則になるわけですが、この就業規則を十数年前に作成して、そのままにされている会社をよく見受けます。このような会社でトラブルになりがちなのが、新入社員が入り、雇用契約書を結んだものの、後になって就業規則と雇用契約書の内容が異なっていた事例です。つまり、現在の働き方に合わせて雇用契約書は最新のものを使用しているのですが、就業規則を取り出してみると、内容が現状とはまるっきり異なるということです。会社は業績や環境に合わせて、毎年少しずつ変化しているわけですから、数年も経てば就業規則の内容とかい離していきます。
このようなケースでは、就業規則と雇用契約書のどちらが優先されるのでしょうか?
労働基準法に定めがあり、(1)労働基準法(2)労働協約(3)就業規則(4)雇用契約書──の順で、社員に有利な条件が優先されるとあります。就業規則と雇用契約書の関係だけをみると、就業規則の内容よりも不利な労働条件を定めた雇用契約書については、就業規則の方が優先されます。逆に就業規則よりも有利な条件を定めた場合は、そのまま雇用契約書が優先されます。
そして、このような事例で一番注意すべきは給与(就業規則に付随する給与規程)なのです。近年の景気変動の影響を受けて、残業代を定額で支払う会社が増えています。確かに個別の契約書の中には定額残業制導入の趣旨がうたわれ、社員に対して周知させています。
しかし、さきほどの優先順位を思い出して下さい。いくら個別の契約書を細かく直したとしても、給与規程を改訂しなければ、以前のままの制度が適用されてしまいます。言い方を変えれば、新たに導入したはずの定額残業制は無効ということなのです。会社と社員の労働条件に変更があった場合、有利・不利な条件に関わらず、必ず就業規則と雇用契約書のセットで変更しておく習慣を付けておくべきでしょう。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄) -
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筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
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