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ブログ・馬場 栄
第25回:精神疾患の労災認定基準(1)
2014年4月24日
ここ数年、うつ病に代表される精神疾患の労災請求件数が急激に伸び、我々への相談件数も増加傾向にあります。精神疾患の特徴は、業務との因果関係を立証することが難しいため、認定までに多くの時間を要し、支給決定までに平均8か月程かかることが問題として取りざたされていました。これを受けて昨年末、厚生労働省は請求から認定までの迅速な処理を目的として、新たに精神疾患の労災認定基準を定めることとなりました。
今回は、公表された認定基準の中身を見る前に、精神疾患が労災認定されるか否かで、どのような違いがあるのかを説明したいと思います。
まず、仮に社員が傷病を患った場合、業務中であれば労災、それ以外であれば健康保険が適用されます。それぞれ社員が受けられる給付を見ると、治療費は労災であれば自己負担が0円に対して、健康保険は3割負担。休業期間中の補償は労災が給与の約80%に対して、健康保険は給与の約66%が受けられます。また、労災だけの大きな特徴として、休業している期間、会社はその社員を解雇することが出来ません。
これらのことから考えると、傷病の原因が業務中なのか、それ以外なのか判断し難い場合、補償の手厚い労災で取り扱ってもらいたいというのが、社員側の本心ではないでしょうか。
しかし、会社側は真逆の発想です。労災が認定されるということは、「会社が行わせた業務が原因である」と言い換えることができます。つまり、会社側は不法行為責任が問われることとなり、場合によっては多額の損害賠償請求をされる可能性が高くなるからです。
この労災認定を巡っては、たびたび労使で争いが起きているのが現状であり、冒頭申し上げた認定基準が設けられた背景の一つと言っても過言ではないでしょう。
次回は、実際に認定基準の中身についてくわしく解説していきたいと思います。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄) -
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筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
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