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  • ブログ・花房 陵

    その物流は経営戦略なのか

    2007年11月27日

     
     
     

    ●物流戦略の入り口
    物流部門が経営戦略の重要な位置を占めていることを教えられたのは、この20年の話題でした。
    毎年の部門長会議や経営陣からの期待にも、物流部門の重要性をいつも言われています。
    ところが現場はこの意向にどのように反応しているかと、振り返ってみると常に効率化コストダウン
    一辺倒で過ぎてきました。
    業務の効率化やコストダウンは、企業のすべての部門で共通の課題であり、責められるのは物流
    だけではありません。ただ、企業経費の割合が高すぎるので目立っているのが実態です。
    物流コストが予定外にかさんだり、コストダウン計画が予定をクリアできないと、企業業績が低迷して
    しまいます。その意味では物流部門の動向が経営そのものを揺るがしかねない事情があります。
    けれども、コストダウンは果たして重要な経営戦略なのでしょうか。販売や生産の強化のほうが優先
    順位の高い戦略であるに違いありません。
    物流部門の改善や改革、戦略の遂行としての新しい取り組みが、販売と生産の強化につながり、
    同時にコストダウンを実現できるなら、二つ以上の目的を満たす戦略に勝ち目があるのでしょうか。
    ●戦略は選択と集中に現れます
    販売増かコストダウンか、どちらを選択するかは重要な経営の意思決定です。そりゃ同時に獲得で
    きるに越したことはありませんが、営業利益率と利益額の二つを追いかけて実った験しがないように
    戦略の実行では優先順位の設定が実現の可能性を左右してしまいます。
    物流コストダウンはずーっといわれ続けてきましたが、物流部門にしてみれば自立的にコストを把握
    しているわけではなく、保管も輸送も販売計画の一環として執行管理を行っているに過ぎません。
    在庫問題も現物管理の責任はあっても、削減するための生産調整や販売促進を計画することすら
    ゆだねられてはいないのです。その辺の矛盾を解決するために、製販物のSCM部門が創造されまし
    たが、十分に機能しているとはいいがたい状況です。
    販売かコストダウンか、どちらを優先すべきかは明白です。
    販売のための物流改革や構造改善こそが、物流の戦略性を発揮できる優れた選択なのです。
    ●販売を正しく支援してきたかどうか
    販売が不調で業績が低迷している
    →事業の再編やリストラ、そこまで行かなくても目立つコストは大なたで削減しなくては
    この構造が物流部門をナーバスにしています。自立的でなく、裁量余地の少ない物流コスト、端的に
    いって輸送費の削減が効果が大きいので、運賃交渉となるわけですが、単価をいじっても総額では
    どうなのか。輸送回数の左右しているのは物流ではなく、販売計画、販売の最前線ではないか。
    こんな単純な次元での問題協議が十分に行われずに来ているのが現実ではないでしょうか。
    販売の手法や手段、回数や単価の構造を変えずに輸送総額を削減することは不可能です。
    物流部門はこの視点を絶対に失ってはいけない。
    どのような商談がコストアップにつながるのか、どんな商談をお勧めしたいのか。販売部門との協調
    なくして、物流コストの大幅な削減は不可能で、その意味では物流戦略は販売支援に徹することが
    最優先課題と言えるでしょう。
    販売部門にはコスト情報を提供し、商談の条件に有利性を確保してもらう。
    製造部門には他社払い=仕入れ埋蔵 となっている物流コストの構造を理解してもらい、手をつけ
    るべき輸送状況を分析する。
    このような販売支援の正統派を目指すことが、物流戦略の最重要課題ではないでしょうか。
    ●企業ライフサイクルと戦略物流の問題点
    販売活動のライフサイクルと物流の関係は、意外と単純に整理できるものです。
    商品のライフサイクルはご存じでしょう。マーケットへの登場から→成長→安定→衰退という、
    時間と売上という経験値のグラフの事です。企業にもライフサイクルがあり、どのような企業で
    も平均寿命は30年といわれた時期があります。画期的な新商品を片手にマーケットに登場し
    て、対前年比率数百%の成長を遂げても、ある時期を過ぎてからは売上が伸び悩み、営業利
    益も捻出できなくなり、事業の縮小策としてリストラを行いながら退場してゆく企業があります。
    人の寿命にも似ていて、企業は人と物に悩みながらも成長と衰退を繰り返して行きます。企業
    の成長は一直線にはならず、紆余曲折を経てゆくのです。衰退期に新しい商品やサービスを
    生み出せれば、また新しい成長曲線に軌道を変えて行くことができるのです。複数のS字曲線
    で示されるライフサイクルカーブをつなげて行くことが、企業の存続そのものなのです。
    どのような産業でもマーケットニーズにフィットさせながら、商品やサービスを連続的に供給して
    ゆかなければなりません。マーケットに対してムリな供給は、販売価格の値崩れを起こし、売上
    を上げようとすると販促費用がかさみ、物流コストもどんどん掛かるようになります。結局、肝心
    の利益を伴わない事態を引き起こすのです。
    ライフサイクルカーブには4つの場面があります。市場への導入期、成長期、安定・成熟期、衰
    退期です。それぞれのステージ、局面では典型的な物流問題が生じています。物流が企業の
    成長を促したり、減速させたり、場合によっては物流の失敗が企業の命取りとなることもあるの
    です。
    売上の成長期では、物流の能力がもっとも発揮されなくてはならない時期です。対前年比売
    上が数百%にも上るとき、物流センターの規模が追いつかなければ、注文をこなしきれない事
    態に陥ります。
    多くの売上がひとかたまりの商品群や顧客層で占められるように、企業の成長にはある種の
    経験値と法則があります。売上の成長率鈍化と大幅な低落の後に再成長がスタートできるの
    が標準的なモデルです。企業の成長にはいくつものS字カーブが不連続につながっていると見
    ることが自然なのです。
     売上が倍々ゲームの華やかな頃を過ぎると、営業のための販促費がかかるようになり利益
    が伸び悩む時には、物流が経営問題となってきます。企業の経常利益率に匹敵するのが物流
    コストだからです。
     「物流問題とはコストダウンである」といわれるのは、企業の成長段階の様々な局面で物流
    コストが利益を圧迫していることに気づくからです。実際は物流の問題ではなく、営業活動や
    マーケット市場への取組が本質なのですが、そのことは徐々に解き明かしてゆきましょう。
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    □11/28 『戦略物流の基本とカラクリ』秀和システム¥1400 完成
    書店では来週から販売、手にとって見てください

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    花房 陵

    イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
    コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。

     
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