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ブログ・花房 陵
仕事の品質にこだわるヒト
2007年9月25日
●物流はトヨタ方式ではこなせない
圧倒的な生産性を高める手法にトヨタ方式が挙げられるらしい。郵便局も銀行も、生産工場も食品
スーパーも件の方式が劇的改革をもたらすと言われている。
確かに作業動線や作業の一つひとつの工程を分析して、常に新しいやり方を研究するのは必要な
改善手法でしょう。自動車生産で培った日本の技とも言えるトヨタ方式、働くヒトの人種が違うとも言
われているトヨタウェイを学びたい気持ちはよく分かる。
しかし、自動車や製造工場に共通していて物流現場と全く異なる環境があります。それは、計画的
な仕事の進め方という大前提です。本日の生産、本日の業務、本日の総労働時間と総工数の計画
というのが、工場では常識です。すべてが計画、時間と共に予定が消化されてゆくのです。
この仕事が終われば次に行く、次のそのまた次も計画に示されている製造工程と物流現場の違いは
何か。
次が分からない、このことに尽きるのが物流現場ではないだろうか。指示書が遅れる、入荷が遅れる、
出荷の順番が変えられる、予定の人員が来ない、来ても使えない、多すぎて手待ちになる、・・・・
予定が最初っから順番違いになるのが当たり前の物流現場。そこに科学的な工法が使えるか否か。
トヨタ方式できれいな業務フローを描き、一つひとつの工程と手順を整理することは重用であって、物流
では忘れてきたことかも知れません。工場の物流とセンターでの物流では、「数えて運ぶ」作業その
ものが別物に見えるときがあります。
●良い仕事は再現性が難しい
作業指示書や計画書が無くても品物は出荷しなくては終わらない。せっかくの受注だから、営業さん
の苦労を実らせるためには物流ががんばりを効かさなければならない。昨日もがんばれたんだから
今日も同じようにミス無く、能率良く、同じように終わらせなければならない。しかし、時間がない、ヒト
が足りない、機械がうまく働かない。・・・・物流現場では昨日と同じ事が今日は難しい、という現実が
あります。同じ事を繰り返すという再現性がもっとも難しいのが物流現場。
そこには科学よりも人情や根性、努力が必要になります。乗り切ろうという意欲と強い心が何よりも
必要になります。機械と情報と伝票があっても、作業者の意欲が弱まればすべてが下がってしまう。
机の計算が活かされない現場の苦労がここにあります。
●品質は継続的な改善の結果
今日の仕事を終えて終礼を行うとき、本日の実績と昨日との比較を行うセンター長がいます。常に
比較、いつも進化と向上を目指す姿勢は現場でも鬼軍曹と言われるほどです。しかし、彼の心意気は
「良い仕事を残したい、販売や生産に負けない価値を生み出したい」そのためには、生産性や品質の
向上と進化、進歩を記録してゆくしかないと言います。
改善は不都合を直すこと、とも言いますが、緩い感性なら改善テーマすら見つけられません。今のま
までも充分だ、と思いこんだ途端に進歩が止まります。
仕事を量り記録を残すことで、生産性の変化と品質のブレが落ち着いてゆくそうです。
何も心がけなければ、何も変わらずこなしているだけ。事故は確率で起きるし、人は時間と共に消耗
して脱落し、機械は性能を下げてゆきます。去年の成績を維持することすら難しく、言い訳ばかりを
探そうとしている自分に気づきます。
●プライドにあふれた職場の姿
仕事の醍醐味は自分でどこまでコントロールできるかにあります。指示だけ、命令だけを消化するなら
自分が機械になってしまう。プライドや職業への誇りをどうやって実現してゆくのか。考えている人は
悩み、試行して変化を記録します。
整理整頓すら他人と比較して、自分の位置や意欲を確かめようとしている物です。自分の位置を知る
ためには、評価や比較という尺度を持ちたいと願う人は少ないかも知れません。だからこそプライドある
仕事ぶりが目立つのです。
こだわり、がんこ、うるさい屋、・・・・鬼軍曹と言われなくても、言葉に出さない決意や約束があるのです。声が大きいだけなら現場には不要だし、言うだけで実行できないなら反発されます。
積み上げ型の実行を続けるためには、何よりも良い仕事を残したいという決意です。小さな心に残す
誓いがあれば、仕事ぶりや態度、表情や発言が変わってくるのです。この記事へのコメント
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筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
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