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ブログ・花房 陵
物流の見える化とは
2008年3月4日
●プロは見なくても分かる?
タイヤのセールスマンはトラックを遠目で見るだけで、片べりの程度や運転の様子を知ることができる。近くで見れば、この会社に一年で何本のタイヤが売り込めるかが分かるといいます。
そ~かもしれませんね。我々も荷物の積み方、ドアの内側を見るだけでその会社の社風や品質の程度を予測できます。
トラックのボディや運転席を見せてもらえば、会社の問題点や事故の発生確率まで想像できます。
そう、我々はいつも「その道のプロや経験者に見られている」のです。言葉や約束よりも事実が物語る真理こそ、「見える化」ブームの本質でしょう。
見える化とはブラックボックスを避けて文書化やマニュアル化、業績をきちんとデータで語る経営管理の方法です。物流はこのデータで語ることを苦手としてきました。忙しい、管理業務より現場が最優先。何より目先の貨物を運ばねばならない、山と積まれた商品を捌いていかねばならなかったからです。
その結果、我々はどのような評価を受けてきたでしょう。
一生懸命に現場を守ること、捌くことにプロ意識を示したとしても「それってシゴトでしょ」と軽くいなされてきたのが落ちどころでした。
営業や生産は業績をデータで語ることができます。売上げや品質、コストダウンや生産量などの生産性を常に数字で管理され、数値目標を追いかけています。
片や物流では、予定は崩れ、明日の仕事の変動はきつく、急激な物量があっても準備が足りずに残業や走り込みで何とかこなしている毎日です。それでも評価がほどほどなら、シゴトのやり方を変えなければなりません。
我々の業績をきちんと評価につなげる必要があるのです。
安全や心がけ、やさしさや心配りもデータや事実で示してゆかねば、これからの競争は厳しいものがあります。「そんなつもりではなかった」という事故の言い訳は一切通用しないからです。
●見せるものには何がある?
業績というのは尺度が難しいかもしれません。けれどもプロの意地やこだわり、品質の心がけや優しさ、律儀さ、確実さ、ていねいな仕事ぶりを示すにはどんな見える化が使えるでしょうか。
職人と呼ぶ職業にはさまざまありますが、すし屋、大工、技術者、専門家、芸能人、歌手、新聞記者、小説家・・・・みんなの特徴は「道具にこだわる」姿ではないでしょうか。
高価で古い道具を大切に使い込んでいますよね。一目で分かる手入れの行き届いた包丁、工具、のどという体調、万年筆やパソコン、・・・・
我々も物流のプロなら、トラックやフォークリフトを磨き上げることが主張につながるでしょう。
5Sがいつも言われ続けているのは、こんなプロの根性、こだわり、意地を見せることにつながることもあるのでしょう。
運転席のごみや汚れがあるのと無いのとでは、何が違うというのか、というお叱りも聞こえてきますが、整理清潔にすることの見える化はずいぶんと効果があると思うのです。
5Sを説明する勉強会や講習会で、第1次南極越冬隊長西堀栄三郎の話があります。
船という狭い空間で技術者や学者、自衛隊や船員たちがそれぞれにプロとして選ばれたのだから、道具が常に点検され、いつでも必要なときに取り出せるように号令をかけたそうです。
『恥知らずを排除して、プロの意地を示せ』つまりは見える化を徹底したということです。
●見せるは魅せるにつながる
道具や職場のこだわりは魅力につながります。物流でいえば「コストや品質のこだわり」が一目で分かるということです。
働く人の意欲や誠意、確かさや頼りがいまで伝えることもできるでしょう。
そのために必要なのは、今この瞬間の心がけ以外には何もいりません。
人生の運命は、運に左右されています。運は幸運の出来事によりますが、幸運を引き込むには強く願い、人に働きかけ、自らを正してゆくこと。行動を変えるには習慣を変えなければなりませんが、その習慣は毎日の意識とたった今の瞬間によっています。
物流の見える化は、業績の魅力につなげるために、この瞬間が大切なのです。この記事へのコメント
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筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
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