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  • ブログ・花房 陵

    最終号『社長の頭にある物流イメージ』

    2008年8月9日

     
     
     

    ● 経営戦略としての物流イメージ
    物流の成功によって企業が飛躍的に進化した事例がたくさん登場しています。アスクル、ゼロックス、セブンイレブン、名だたる通販企業やコンビニ、売り切る物流のしまむら、そして調達物流までも含めた例で言えばアマゾン、トヨタ、キリン、明治乳業、味の素、日本製造業の最終形と呼ばれた花王モデルや世界標準になったBTOのデルコンピュータ。
    経営者は書籍やニュースでこれらの企業を知り、自社に転用できないか、この業界での成功を求めて様々な物流改革を手がけてきました。
    販売網を物流でカバーし、生産や調達を高速物流でネットワークし、情報システムを駆使して在庫削減、リアルタイム受発注を実現したいと考えました。
    営業部門の力のなさを実感したときから、業界内M&Aを手がけようと計画して、販売部門の一挙入手を指向しています。生産の弱さを実感すると同様に優れた工場を手に入れるための、財務戦略や資金調達に頭を悩ますようです。
    成功したM&Aでは、確実に増えた物量が物流の効率化と共同化をもたらし、今まで為しえなかった物流効率化が実現できます。このような取り組みは、営業販売の強化に追従する物流効果、もしくは物流先行の事業合従連衡であって、戦略物流と呼べる見事な展開です。
    最新の物流センターは、建築費用と立地コストの低迷から格安のコストで提供されています。機能的にも輸配送の速度を向上させるための仕掛けが多く、入荷出荷のトラックを待機させることもありません。高速道に位置づけられた立地では、全国配送を短時間で結び、拠点集約の副次効果も十分に発揮できているのです。
    現場改善や情報機器システムの導入に投資予算計画を組み立てるより、一気にお引っ越しが功を奏する事が多く、先行事例がうらやましい限り。出遅れてはならじと、物件の比較表を眺めるのが日課になっていることでしょう。
    ● コストダウンとしての物流改革イメージ
    企業の成長はより多くの売上げとより少ない経費による差額利益=営業利益の追求です。マーケティング活動や新商品の投入によっても売上高が望めなくなり、生産拠点の移動や調達手段の変更によるコストダウンが進まなくなり、経費比率の高い人件費リストラのために賃金制度を変更しても初年度Okなら、次年度の施策が無くなります。
    企業経費の目の仇には物流費があり、自社物流ならアウトソーシング、契約が中期になっていれば契約更新を見据えた物流コンペ、年度ごとの契約単価の引き下げ更新を続けてきました。トヨタ流のぞうきん絞りをたとえて、物流コストはいくらでも絞り上げることが出来ると錯覚している経営陣も未だに多くいます。
    物流活動で利用する作業者人件費、倉庫の賃料や地代、トラック運送の燃料費や運賃などはすでに全国共通のオープンプライスですから、自社だけが「割高な思い」をしているはずもないのに、青い鳥探しを続ける無意味さが多く見られます。
    現場を任された担当にとって、コスト重視の活動評価は何より辛いでしょう。今年が半分過ぎれば、すぐさま来年の予算組は始まっていて、打ち手も探す道がありません。
    本来、物流コストは現場を離れた商談や生産計画にあって、限界まで下がってきている物流コスト単価を上げる要因は営業交渉、生産都合にあります。いっそうのコストダウンを狙うことをSCMと呼び、本社の計画を組み入れる必要があるのはこの理由からなのです。
    物流が経営のお荷物という思いこみ
    経営戦略、コストダウン、の様々な施策を打ち続けてくると、改善に終わりナシとは言いながらも物流活動が実は、自社にとっては邪魔者に見えてくる時期があります。経営陣にとっては、自ら物流現場に足を運んでも、その実績や実態が他社との比較ベンチマーク情報の不足から出来ないために、「がんばっているようだが、パフォーマンスが低いのではないか」という思いこみに捕らわれて、頭から離れることがありません。
    優れた営業、見事な生産、多くの顧客に支持を受けながら、思いの外利益が生み出せないこの状況は、市場やマーケットとの最終接点である物流に問題があるに違いないと疑い始め、とまらなくなります。
    もっと優れた物流、コストも品質も見事な物流を実現できる、アウトソーサーが居るに違いなと情報探索、放浪の旅に出るのです。物流コストの構造や作業の品質が特段に劣った自社の従業員のせいではないのに、です。
    いつしか物流が目の仇になり、経営戦略上の重要性よりもコスト問題やサービス品質の話題が増えてきて、自社物流は子会社となり、アウトソーシングは何度も何度もコンペを繰り返すようになるのです。見える化が終わると、出来る化を求め、次はどうする化なんて、現場をいじり始めて止まりません。
    マーケティングと物流、販売活動と顧客情報の収集機能が物流にあり、アウトソーシングは実はきわめて重大なリスクであり、貴重な情報源であることを忘れて、切り出しを考えていたことに気づくのはいつのことなのでしょう。
    工場や営業さんが商談と共に輸送する、顧客配送がもっとも親密な顧客管理の原点であることにたどり着かねば、かつての利益率や人あたり売上げ利益額の確保は出来ないのです。
    売上げ規模が増えても利益を伴わず、あげくに部門の信頼性を疑いながら手がけてみたM&Aが思いの外の効果をもたらさない現実に気づいたとき、顧客やマーケットと自社の関係性が希薄であることに気づきます。顧客の創造や維持が難しくなった時、物流をないがしろにしてきた反動を感じるのです。
    物流の現場から物流の果たしている意味を問うことが大切なのです。先輩から受け継いできた、目の前の荷物を処理するだけの作業としての物流から、経営に直結する役割を改めて見直して見ることが今、本当に求められているのではないか、と。
    14ヶ月続けたこのブログも本号で最終となります。長々とご愛読いただきまして、大変ありがとうございました。また、お目にかかりましょう。すべてのブログ原稿についてのご質疑はいつでもお受け致します。メールで連絡してください(hanabusa@avance-tokyo.com

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    花房 陵

    イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
    コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。

     
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