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ブログ・花房 陵
9 IFRSと物流対策のポイント
2010年11月19日
まだまだ先の話と思っていても、11月に入り急激に環境が変わってきた。東京証券取引所ではIFRS専門の機関を発足させ、4つの部会で情報収集、原書の翻訳、教育と調査を始動した。早速公開企業2300社へのアンケートを実施して、記事になっている。70%企業が調査活動と影響分析を始めたとある。そもそも公開企業専用の会計書式についての話題だが、公開予備軍企業やグループ企業、ある日突然公開企業の関連会社になるチャンスを考えると、およぞ数十万社が予備軍とも言える。
すべての企業活動には物流活動がついて回るから、物流サービスを提供するわれ等にとってのIFRS情報は必須のビジネス作法とも言えるだろう。
・検収基準売上げへの対応
倉庫出荷売上げが主流の日本型会計基準は否認される。IFRSでの収益認識には、リスク、確実な債権の移動、影響範囲から離れる、などという独立性の解説がついて回る。消化仕入れや委託販売、返品条件付やポイント制度のあるような値引き前提の販売活動は、正味売上げだけが認められる。グロスかネットか、という判定だろう。
着荷基準、検収基準となれば物流責任が当然のことに検収終了まで及ぶ。倉庫と運輸の一体化が求められており、物流情報システムの接続能力も求められる。配送伝票と出荷伝票は一体となるまでは、個別独立管理が必要となり、ハンコ回収がどれほど大変になるか。
別モードでは航空、海運、通運ともに到着照会、保険の扱い、検収表の回遊業務まで幅広い工夫と業務フローの変更が必要になる。
・配送伝票の完全管理
配送伝票とは運輸企業のサービス売上げ票そのものであるから、本来は債権確定証憑として7年間の保存が必要のはずだ。配送サービスは請け負い業務でもあるので、配送依頼に基づく請け書を発行すべきだし、それには運賃に従った印紙税が本来は必要になっている。
法令と運用実態は統括官庁の判断によって左右されるものだが、原則論があらためて評価される日も近い。大騒動になりそうだ。
配送伝票原紙が確保できなければ、データやイメージでの保管や照会が必要になるだろう。新たに債権確定検証システムとでも呼ぶアプリケーションが必要になる。事実、宅配大手ではすでに着手済みであるから、差別化要素はスタートしているとも言える。
・棚卸し評価作業
IFRSでは資産の純増に着目する。資本の増加を持って営業利益と合算して包括利益という概念で判定が行われる。資産は特に金融部門を注視するはずだから、商品在庫が膨れることはタブーである。在庫削減の傾向がいっそう強まる。たな卸し評価計算も低価法と言う単純方式に一元化され、いつ公正価値=時価換算に変更となるやも知れない。
本来の思想からいえば、在庫品は再販売価格、再調達価格でしか資産価値とは言えないからだ。これこそIFRSの目指している株主志向の特徴とも言える。
先入れ先出しの励行、製品の日付管理、在庫抑制のための仕掛けと仕組みが物流管理に求められるから、たな卸しは一大行事となるだろう。歓声と失望が渦巻く物流イベントだ。
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筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
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