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    経営再生物語(313)人材育成について(15)A社の事例(2)

    2020年11月16日

     
     
     

     いままでA社では、この「評価する」という思想がなかった。先代にひたすらついていっていればよかったので、一種のヌルマ湯状況にあった。A社のおかれている経営環境は2代目となって、競合他社との厳しいサバイバルに直面している。それが、長年にわたる評価をしないというか、キチっとメリハリをつけないという、いい意味では家族的暖かさというか、ヌルマ湯になっていて、危機感がない。

     名前ばかりの幹部は「ユデガエル」になっている。「ユデガエル」とは、ヌルマ湯の中に入っているカエルが、「これはいい湯だな」と思っているうちに、徐々に熱くなることに気づかず、ついには茹でられてしまうことで、転じて危機感のない没落する運命にある、人と企業の意味である。A社の幹部を「ユデガエル」化したのは先代にもある。企業の成長に人がついていっていないのだ。2代目はこうした状況に深い危機を持ったわけである。

     企業の永続という点からは本当に厳しい。後任者も育っていないし、皆、何とかなると思っている。そこで組織図を作成し、役割分担を明確にして評価制度を確立することとした。

     5人の幹部のうち、58歳の部長(B氏とする)と50歳の課長(C氏とする)が、それぞれ部長、課長を降りたいといってきた。

     B氏「私は入社してから30年働いてきました。一人息子も大学に入れて卒業させることができ、この会社で働けて感謝しています。しかし、今回の組織図を見て、とても私の能力ではダメだと思っています。私は、アホみたいに先代についてきただけの人間です。とても計画したりチェックしたりする仕事は向いていません。私が部長といわれているのも、先代の温情で入社が古いのと、年がいっているというだけでなっただけです。だから部長は辞めます。どうか辞めさせてください」

     C氏「私は名前は課長ですが、世間一般でいわれているような課長ではありません。今までは課長でも残業手当がついていましたが、今回の組織改訂では残業手当がつかなくなります。役職手当がつくだけです。正直言って、これでは月の給与は減収になります。これは痛いです。どうか新しい組織での課長に任命しないでください」

     B氏やC氏の申し出は、なるほどと納得させるものがある。マネージャーの仕事を担当させようとして机のうえで構想しても、実際にはB氏やC氏タイプがいる。これは本人の資質もあるが、それ以上に、会社の風土に起因している。すなわち、評価するという思想の欠落である。評価しようにも基準がない。基準をつくろうとしても、組織が役割分担をはっきりさせていない。はっきりさせていないというより、はっきりすることができないと言い換えた方が良い。

              (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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