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    経営再生物語(319)人材育成について(17)A社の事例(2)

    2021年1月11日

     
     
     

     A社では月1回、第二土曜日を研修日とし、運転者全員を対象として実施している。10年間一緒に苦楽を共にしてきた運転者が辞めたことがきっかけで、月1回の研修がスタートした。

     

     「誇りをもって働ける職場にしよう。社内に潤いのある人間関係と学ぶ姿勢がなければ、価値のある運転者は育たない」(A社の社長)

     運転者が運転することだけで毎日を過ごしているのでは、いつまでたっても職場を転々とする「流れ者」がなくならず、それでは企業としての信頼、発展は得られない。「彷徨う運転者」に自分の場所を見出してほしいとのA社長の気持ちから研修はスタートした。

     一般的にいって運送業のドライバーについて、経営者は次の如くの評価があって、諦めるケースが多い。

     ①家庭生活、今までの人生において、はぐれ者で不幸なタイプが多い。「免許証1枚で何とか食えると思って、ひょっこり入社しているものばかりで、人材育成なんて無駄ですよ」

     ②職場では一円でも給与が多くと、そのことばかりで不平不満の塊である。「へたにドライバーを集めて研修しても不平不満、愚痴の言い合いになりますよ」

     ③働く一人ひとりには成長欲とか伸びていこうとする姿勢は無く、その日暮らしである。「研修なんて無駄ですよ。そんな時間があるぐらいなら、一杯のお酒やパチンコですよ」

     このように、ドライバーに対する見方が一般的な職場風土のなかで、A社の人材育成の実践は際立っている。

     一年間の研修テーマは、次の通りである。

     第一回「年賀式、本年度の目標、方針」

     第二回「君は会社より何を期待されているか」

     第三回「交通安全と事故防止」

     第四回「安全対策の強化」

     第五回「労働災害防止」

     第六回「ドライバーの役割」

     第七回「危険予知訓練」

     第八回「変わりゆく物流需要」

     第九回「報連相の大切さについて」

     第十回「物流新時代への提言」

     第十一回「タイヤの構造とメンテナンス」

     第十二回「本年度の研修会のまとめ」

     以上のテーマで講師を社外より選定し、参加者全員でディスカッションして進めていく。それでも辞めていく社員はいる。「今までの研修の成果は何だったのか。ふと空しさを感じる。それでも人材育成はやらねばならない。それが私どもの会社の生き方だ」(A社の社長云く)  (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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