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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(365)リーダーシップについて(4)―3
2022年2月14日
倒産型リーダーの例について述べてきたが、それではリーダーの条件とは何か。少なくとも私は、次の一説こそ必須であると確信する。「耳中常に耳に逆らうの言を聞き、心中常に心に払(もと)るの事あれば、わずかにこれ徳に進み行を修むるの砥石(しせき)なり。もし言々耳を悦ばせ、事々心に快ければ、すなわちこの生を把って鴆毒(ちんどく)の中に埋在せん」(「業根譚」より)。
諫言、忠言は耳に逆らうものである。しかしイエスマンだけ周りにはべらせ、このような超ワンマンであってはならない。諫言こそ徳を高め、事を修める基本である。これに反して耳を喜ばせる甘言で満足していては人生を鴆毒(ちんどく)(猛毒)に沈めてしまう。
リーダーの中には、順調にいくと「すべて自己の力」と過信して意見をいうものをしりぞけて、イエスマン、指示通り行う部下で周りを固めて自滅していくものもいる。例えば、イトマンの前社長のケースは、私の考えでは、甘言に沈んだケースではないかと思う。
住友銀行からイトマンに乗り込んで、赤字に苦しむ同社を立ち直らせたのは立派である。しかし、自己過信しすぎて、経営悪化のせいを住友銀行のせいにしたり、自分が連れてきた腹心の部下のせいにして、あくまで他に原因を求めていく。自己の責に帰すということがなく、終わりには解任させられて、それでも恨みつらみを諸雑誌に発表する。これほど見苦しいことがあろうか。リーダーは、常に反対意見や諫言忠言をじっくり聞く度量がなくてはならない。
倒産型リーダーのA社長は、「文句をいうやつはクビだ。自分一人になってもやる」と広言していた。私に経営計画の作成を頼んできた動機はただ一つ、銀行から金を借りやすくするためであった。経営計画の作成そのものが粉飾である。
A社長の奥さんの忠言「お父さんは、体が資本よ。まだ飲み歩いて女をつくったりして大丈夫なほど、しっかりした会社にはなっていないのよ。その女もお金についているだけよ。早く目を覚ましてください」
女房にも見放され、ついには夜逃げとなったA社長。B社長のあの忠言をなぜ素直に聞けなかったのか。リーダーたるもの、甘言の猛毒は心せねばならない。耳に逆らうことをじっくりと聞くこと。これは必須の条件である。夜逃げしたA社長がその後どうしているか知らない。
倒産とは不治の病である。これほど怖いものはない。倒産して立ち直る人は、10人に1人もいない。その1人も社会生活を立派にしているというだけで、社長にカムバックしている人ばかりではない。
この厳しさを肝に銘じることこそ、リーダーの心構えである。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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