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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(380)リーダーシップについて(9)―3
2022年6月13日
自発性の引き出しは、トップの思いやりと愛情が水である。思いやりと愛情を持って辛抱強く接し、待つ姿勢も大切である。
私が幹部研修を行っている人数120人のA社について述べる。
A社の社風は家庭的で、ここぞというときは、みんなで助け合う団結力がある。いわば、ある意味では先の運送会社と共通しているところもある。同族会社という点である。
しかし、異なるのは、トップの姿勢である。会社をより大きく成長させるには、幹部のレベルアップが必要ということで、研修の場を設定し、旗を振りラッパを吹いている。
この幹部研修の講師が私であるが、一年間月一回日曜日の丸一日を設定してすすめた。毎回日曜日ということで、私は内心参加するメンバーがついてくるか心配した。
夕方5時に終了して、それから夕食会で一杯飲むので、いつも午後11時頃に終わる。一言で言ってハードである。回を重ねるに従って積極的な幹部と、ついには出てこない幹部もあらわれた。出てこない幹部についてどうするか。
社長曰く「ついてこれなくなる幹部が出るのは仕方ありません。辛抱強く、本人がその気になるのを待つしかありませんなあ。日曜日にパチンコをやりたいので出てこないのですよ。研修よりそりゃあパチンコをやりたいわけだろうから、首に縄をつけて無理やり引っ張ってきても、本人がその気でない限り研修の効果はないでしょう。辛抱強く待つしかありません」
この社長は、一人ひとりの幹部とのヒューマンリレーションを大事にしている。従って夜11時までの毎回の夕食会も、その一環として行っているわけだ。
一人ひとりの幹部の家庭のことまで熟知して、いわば肌を触れ合う如くのヒューマンリレーションを行っている。こうして信頼の絆を強くすることで、一人ひとりのやる気が大いに出てくるのをじっと暖かく見つめている。
ある夕食会でのことである。酒の好きな社長がウーロン茶である。聞けば、体調を崩しているとのこと。この姿は、社長がいかにこうした場を大切にしているかを示すものである。トップの姿勢、すなわち、一人ひとりの幹部の成長を願う思いが、何かのきっかけでより大きなやる気を引き出すのだ。
病気を治すうえで大きなポイントは、その人の持っている自然治癒力で、医者や薬はその手助けにすぎない。自発性は経営活性化の核心であり、それを育て、湧き出させていくのが、トップの仕事である。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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