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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(384)リーダーシップについて(11)―1
2022年7月11日
企業の活性化にとってトップの果たすべき役割は大きい。中小企業にとっては、トップの姿勢が企業成長の命運を握っている。今回はトップについて考察する。
年商30億円、製造メーカーのトップのケースについて述べる。このメーカーは下請会社で100%親会社の受注に依存している。親会社から指示される生産予定をこなすことが、経営の中心である。従って不良率の低減と経費、特に人件費の圧縮が経営課題となっている。
この会社のトップはワンマンで自分の思い通りに経営している。従業員100人、大半は女性で80%を占めていて、パート比率も60%を超えている。
トップは人使いがうまい、まんべんなくあいさつを交わし、細かいところにも注意してよく声をかけて工場を巡回する。
しかし不良率はなかなか改善されず、現状維持で親方日の丸というか、親会社にべったりの状態が続いている。
この会社のトップが、私に経営体質の転換・改善について相談を持ち掛けた。
「実は親会社の方針で現在我が社が扱っている主力製品について、来年度から現在と比して50%の生産予定とすると通告された。この状態はずっと続くので親会社100%の依存体質から脱却してほしいと申し渡された。どうしたらいいのか」
早速、私は経営内容の分析からスタートした。企業が生き残りのため残されている時間は、6か月、それ以降は新年度が始まり、生産が半減する。驚くべきことは、トップの利益に対する考え方である。経常利益はここ数年2000万円、利益率1%で推移しつつも、課税所得はだいたい1億円であるということに表れている。
トップの利益に対する考え方は、「宵越しの金を持たない主義」で、内部留保という発想がない。2000万円と1億円の差、8000万円は交際費である。
バレンタインデーには従業員100人全員に行き渡るほどチョコレートが飲み屋の女性たちから届けられる。交際費は課税されるので納税資金に四苦八苦し、借入金に頼るのがパターンである。
「社長、これではまるで何しているか分かりませんよ。税金の払いすぎですよ。交際費の100万円は、資金繰りからいうと、税金を考えるとほぼ160万円になりますよ。しかも会社に何も残りません」
「分かっているけれど、飲まずにいられないんだ。このペースで20年やってきたし、使い切るというのはわしの人生の美学や」
私は社長とじっくり話し合った。企業の目的は、一代限りではない。ゴーイングコーサンといって継続することにある。
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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