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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(391)ビジョンをはっきりする―2
2022年9月12日
「あなたの会社の社風はどんな特徴がありますか」、私は昭和35年入社という人事部長に尋ねた。彼は中学校を卒業して夜間の高校、大学と働きながら学んだ人で、真面目なタイプである。
「それは、この応接室の蛍光灯に象徴されていますね。無駄なことには一切お金をかけない主義です。社長は、いまだにマイカーで通勤して、社用車すら持とうとしません。この応接室のソファをご覧ください。擦り切れているでしょう。これでいいんですよ。訪ねてくるのは銀行ぐらいしかいないのです。得意先は一社しかありませんし、まあ下請けですから、派手なことをしてお前のとこは儲けすぎや、利益を返せと言われてもかないませんからね」
「なるほどね、こうしてロウソクの火のような部屋で聞かせていただいていると実感しますよ。しかし質素だけではこんなに素晴らしい利益は出ませんよ。他にどんな特徴がありますか」
しばらく考え込んで人事部長は口を開いた。「ズバリ言って社長の能力がズバ抜けていることです。数字に強くてチェックが厳しいのです。だから面白い現象があるんですよ。うちは課長以上が15人いますが、誰一人として子どもを入社させようとしません。こんな厳しい会社は俺一人で十分だということですね。反対に一般社員の子どもは時々入社します。それは給与水準がいいことにも原因があります。一人当たりの平均給与が、アルバイトを除いて月額50万ですからね」
「なるほど、よく分りました。しかしコンサルタントとしての第一印象は、暗いというか、活力の点ですね。先ほど、事務所を通って応接室に入りましたが、働いている人は50歳以上の感じですね」
「おっしゃる通りです。平均年齢が50歳です。社歴が古いので社員の高齢化に苦しんでいます」「社長はこれからの会社をどういう方向に持っていこうとされているのですか。高齢化ということであれば、このままいくと段々と元気がなくなっていく気がしますよ」
「実はそれが悩みなのです。社長は将来こうするとかいうことは言わないのです。夢を語らない社長なんです。人事部長として人集めに苦労しているのです。社外工部門は特に深刻です。一日3交代の職場ですし、高齢化する一方なのです」
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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