-
ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(399)全社員の気持ちを一つにする―1
2022年11月10日
中期経営計画を絵に描いたモチにしてはならない。私はかつてある企業を訪問した際、30ページぐらいの立派な経営計画書を拝見したことがある。
応対の経理課長は、「この経営計画書は銀行用ですよ」と平然と言った。
「何故、銀行用なのですか」と尋ねると次のように説明した。「うちの社長は、こういう計画を作るのが好きです。目的は取引銀行に見せて、安心させることにあります」。正に絵に描いたモチである。
社員は計画の内容を知らない。これでは経営計画の役割を果たしているとは言い難い。
一口で言えば、全社員の気持ちをひとつにするための指針が、中期経営計画である。したがって全社員に周知する努力がなければならない。
全社員の気持ちをひとつにするケーススタディ
従業員60人、年商23億円の薬品製造販売会社のケースを紹介する。中期経営計画作成委員会というプロジェクトチームを発足させ、3か月で骨子をまとめた。月2回、各2時間程度の委員会を積み重ねた結果である。メンバーは社長はじめ、課長以上10人である。
中期3か年の目標は年商30億円、経常利益1億5000万円である。骨子をふくらませるために、2か月かけて、社長は全社員一人ひとりと面談した。社長は、中期のビジョンを示し、願いを語り、一人ひとりの声に耳を傾けた。
「よく聞くことに徹しましたよ。聞くことで信頼感を強め、計画への達成意欲を共有するようにしました」。社長の言葉である。
そして、「中期経営計画発表会」を全社員の参加をえて丸半日かけて実施した。
こうした手順こそ周知徹底の見本である。この過程で全社員の気持ちをひとつにするのだ。会社の進むべき方向性、達成すべき数値目標、そして危機感、こうした点でひとつにするのだ。
いつまででも会社は安泰と、ノホホンとしたぬるま湯状態を脱して、「このままではダメだ」との危機感を共有して、目標の鮮明さと達成意欲をはっきりするのだ。
丸半日かけた「中期経営計画発表会」のあとは、一人ひとりの胸に「アタック30」のワッペンをつけた。
「アタック30」とは言うまでもなく、年商30億円のことである。
そして、3か月に1回、半日を費して、中期経営計画の達成状況のチェック集会を行っている。
こうした実践で、〝全社員の気持ちをひとつにする〟ことにチャレンジしている。一人ひとりの社員の目の色が変わらねばならない。やる気を引き出さねばならない。そのためにこそ中期経営計画があるのだ。
目標達成のあかつきには成果配分がある。
心をひとつにすることは、楽しく充実している。胸のワッペン「アタック30」が語りかけてくるようだ。 (つづく)
関連記事
-
-
-
-
筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
「ブログ・川﨑 依邦」の 月別記事一覧
-
「ブログ・川﨑 依邦」の新着記事
-
物流メルマガ