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ブログ・川﨑 依邦
労働審判・全面勝利体験報告(8)「記録がいかに大切か」
2010年7月9日
予想される争点及び争点に関する重要な事実
(1)予想される争点
第1の争点は、合意書(甲第300号証)第2項の有効性である。第2の争点は、申立人が労働基準法第41条2号に該当するか否かである。第3の争点は、労働時間のうち申立人の推定にかかる部分の扱いである。第4の争点は、平成21年7月16日付辞令に基づく配置転換が、不法行為に該当するか否かである。
(2)第一の争点に関する重要な事実及び証拠等(1)合意書(甲第300号証)に押印するに至った事情は、第6の1(5月3日号掲載)および陳述書(甲第301号証)に記載の通り。退職間際に、申立人は配車日報を初めて社外に持ち出すことに成功し、合意書に押印した後で、詳細に計算した。
その結果、未払いの割増賃金が膨大な金額にのぼることを初めて知ったのであり、合意書に押印した際には、具体的な未払い額の認識はなかった。社長は、申立人に対して、管理職には割増賃金の請求権はないと説明していたが、退職後に調べてみると、申立人は労働基準法第41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」には該当しないことを知った。社長はかねてから、社会保険労務士の資格を有することを公言していたため、申立人も専門的知識を有する者の言うことだから間違いはないだろうと誤信していた(申立書より)。
予想される争点は合意書の有効性と、いわゆる「名ばかり管理者」であったかどうか。さらに、辞令に基づく配置転換が不法行為に該当するか否かである。結果としては合意書は有効であり、「名ばかり管理者」でもないと、調停にあたって確認した。合意書は「退職したことをもって(株)プレジャーと申立人との間に債権、債務はないことを確認する」としている。
にもかかわらず申立人は、合意書は無理矢理書かされたものであると主張してくる。結果として申立人の主張は完全に退けられた。とはいうものの、訴えてくる者は何かと理屈を付けてくるものである。訴えを退けるには証拠がいる。合意書が無理矢理でないことを明確に示す証拠がいる。
申立人は「名ばかり管理者」であるとして割増賃金未払いを主張する。そのために配車日報を無断で社外に持ち出している。申立人からすると証拠である。これに対して相手方はひっくり返していく証拠を提示する。記録がどれほど大切であるか、しみじみと思わされる。
ひっくり返していく証拠があったからこそ、全面勝利したわけである。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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