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ブログ・川﨑 依邦
労働審判・全面勝利体験報告(10)第2の争点に関する重要な事実
2010年7月22日
労働基準法第41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」とは「部長、工場長など労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである」(昭22.9.13基発第27号、同63.3.14基発第150号)としている。
具体的には,経営方針の決定に参画し、または労務管理上の指揮権限を有しているか、出退勤について厳格な規制を受けず自己の勤務時間について自由裁量を有する地位にあるか否か、職務の重要性に見合う十分な役付手当等が支給されているか否か、賞与について一般労働者に比べて優遇措置が講じられているか否かなどで判断することになると思われる。申立人の主張
申立人は経営方針を決定するための会議に出席したことはあるものの、意見を求められることも発言することもほとんどなく、経営方針の決定に参画してはいなかった。社員の採用、賃金の決定など、人事労務に関しても決定権限は社長ないし常務にのみあり、申立人にはなかった。
勤務時間については午前6時出社・午後6時退社が黙示的に命令されており、自由裁量権はなかった(甲第298号証参照)。仮に命令されていなくとも、毎日遅くとも午前6時30分までには、ある大手取引先に出向いて配車の手配をすることになっていたし、午後6時ごろまでは会社も業界も動いているので、事務所に待機して変事に備える業務上の必要があった。よって、勤務時間の自由裁量権があったとはいえない。
待遇については、他の社員がどの程度の給与水準であったか知らないため優遇されていたかわからないものの、週6日出勤・1日12時間勤務の対価としては到底、厚遇とは言いがたいと考える(甲第2号証)。よって、申立人は「監督若しくは管理の地位にある者」には該当しない。(申立書より)
管理者かどうかを巡って争っていくことになる。今回は全面勝利した。証拠がしっかりとしていたからである。運送業では管理者といっても、ドライバーが急に休んだりするとハンドルを握ることも普通である。机にしがみついている管理者は稀である。「自分は名ばかり管理者である」と主張されて「君は管理者である」と言い切れるか。中小運送業の現実の重みがある。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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