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ブログ・川﨑 依邦
労働審判・全面勝利体験報告(25)加速する労働者保護の流れ
2010年11月9日
川?常務は経営全般を見ており、日々の配車等について、申立人の判断に指示等を行うものではなかった。また、部長は荷主に対する営業、クレームの対応等、荷主管理や日々の売り上げ数字を把握する計数管理を中心に行っており、配車については一切担当していなかった。
相手方においては、運転者の給与体系は基本給のほか、売り上げに連動した業績給制度が採用されており、これは運転者の能力等を判断して、具体的にどのような仕事をどの程度割り振るかによって給与が決定されることになる。このような業績給の基礎となる業務内容については、すべて配車リーダーである申立人が決定することとなっており、申立人は運転者の労務管理について、強い権限を有していたものと認められる。また、賞与の査定についても、川?常務、部長及び申立人の三人の協議において査定を行い、それを見て、最終的に川?社長が決定するというシステムが採用されていた(乙2)。さらに、相手方の従業員である運転者が無免許運転等の違反をしていたことが発覚した際に、その従業員をどのような処分にするか(懲戒解雇にするか否か)についても、まずは幹部である常務、部長及び申立人の3人において協議がなされた(乙3、乙4)。
ある従業員を懲戒解雇にするか否かということは、極めて重要な人事に関する決定事項であり、経営に参画していない者が、そもそもその決定のための協議の場に参加して、意見を述べるということはあり得ない。申立人は、申立人が懲戒解雇を主張したにもかかわらず、川?社長によってその意見が受け入れられなかったことをもって、申立人に人事に関する権限がなかったかのように主張するが、そもそも懲戒解雇をするか否かという点は、極めて重要な人事に関する事項である。最高経営責任者である川?社長が最終的な判断を行うのは当然であり、このことをもって、申立人に人事に関する権限がなかったということにはならない。(答弁書より)
中小運送業の経営者が置かれている経営環境は厳しい。労働者保護の流れは加速している。したがって、訴えればすぐ金になると思い違いしている者もいる。申立人もその一人ではないかと推測する。
なんでもかんでも時間外手当の未払いが発生してくると、中小運送業の経営は行き詰まってしまう。合法的できちんとした労務対策が急務である。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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