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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(38)「労働協約」の効果
2012年3月23日
「労働協約」で守られている組合員と、そうでない非組合員とに分かれることになる。1人でも入れる労働組合からすると「労働協約」は錦の御旗みたいなものである。
これからのことを考えると重い。もし非組合員のなかで再雇用しないと決めたとする。本人が不満であれば、そのまま分会員に入会すれば「労働協約」によって再雇用しなければならなくなる。ひとつの会社で同じ労働者なのに、労働条件に格差が生じてしまう。労働組合と締結した「労働協約」は目に見えない力で非組合員にも効果を及ぼす。労働組合からすると、非組合員は組合費も払わず果実のみ手に入れていることになる。果実とは会社と結んだ有利な労働条件のことである。今回は再雇用の果実である。賃金カットもおいそれとはできなくなる。労働組合は賃金カットは余程のことがない限り容認しない。たとえ会社が赤字となっても賃金カットは許さない。会社が赤字となるのは経営者の責任であり労働者には非がない。赤字のツケを労働者に押し付けるなど、もってのほかで、これが労働組合の立場である。そうすると経営者が経営危機に直面しても労働組合員の賃金カットは簡単にはいかない。それでは非組合員のみに賃金カットの協力を求めることができるであろうか。強行したとしても労働組合に駆け込むドライバーが出てくるだけである。果実たる所以である。
あるいは非組合員がクレーム・トラブルを多発させる。1年間に3回もする。そこで解雇しようとしても目に見えない力=「労働協約」がある。非組合員であっても解雇はしにくい。たった1人の分会員と言えども「労働協約」の力は非組合員に及ぶ。経営上のやむにやまれぬリストラや賃金カット、解雇はしにくくなる。今回は再雇用をきっかけとする「労働協約」であっても、根本的には経営者の手足を縛っていくことは間違いない。
X社のことが頭をかすめる。経営権、人事権に足かせをはめられると、にっちもさっちもいかなくなる。マラソンで足に鉄の重りを引きずって走っているようなことになる。決定的にスピードが不足する。A社長はつくづく考え込まされる。「どうして我々のような中小企業の現実を考えてくれないのか。私が社長といっても借金持ちの男で毎日ヒィヒィ資金繰りをしている。時にはハンドルを握って仕事もしている。携帯電話も24時間手放せない」。確かに労働基準法は大、中、小の会社に等しく適用される。「しかし中小企業の現実を分かっているのか」。これがA社長の想いである。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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