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ブログ・川﨑 依邦
中小運送会社の経営改善の記録(11)やる気の持てる給与改革を目指す
2012年9月13日
給与改革を決断する。現行の給与では問題がある。「一人でも入れる労働組合」の洗礼で時間型の給与となっているが、労働時間が長くなればなるほど給料が高くなる。作業効率が悪く、長時間働いていると給料が高くなり、反対に作業効率を高めて要領よく仕事をすると給料は低くなる。矛盾、不公平が生じている。
運送業では時間×割増単価のみで残業代を払っていると、実態にそぐわない。時間×割増単価は労働基準法所定の残業代支払ルールである。会社割増賃金として残業代を支払うルールを作らねばならない。会社割増賃金が法所定の割増賃金を下回っていれば、その分を支払うこととする。給与改革のきっかけはグリーン経営の取り組みだった。燃費効率を高めていくドライバーに報いていくには、時間数×割増単価ではない方式として、会社割増賃金ルール=運行時間外手当ルールを作る。給与改革の前段として、36協定の締結を行う。平成20年3月のことである。組合員と元組合員に分裂した原因を作った36協定だ。ドライバー職の特別条項・特別協定として月90時間の時間外労働協定である。既に労働組合は活動を停止していた。委員長が配車担当者になっていたからだ。活動停止の労使打ち合わせ会を平成20年2月に行った。「これからは労働組合がなくても労働組合がある時以上の経営をして下さい」「我々の声にしっかりと耳を傾ける経営をして下さい」。一つひとつ心にしみる言葉を組合員は述べる。「我々の気持ちをしっかり組んでくれれば労働組合を結成することもありません」。
経営を引き継ぐ平成19年11月より前の6か月間は、ドライバー間でも不祥事が多発していた。何者かが非組合員の大型ダンプの前に小石を積み重ねてタイヤをパンクさせようとしていたこともある。当時の経営者には迷惑メールがしきりと送られてきていた。車庫に汚物が置いてある。嫌がらせである。
激動の3か月を経て36協定の締結ということになる。経営者が交代し、主要荷主から3か月後の取引解約が来た。こうしたピンチに遭遇し、ようやく締結した。配車担当者が常務から委員長へとバトンタッチする。委員長はこの時点で労働組合を抜けたので、元委員長となる。元委員長はポツリとつぶやく。「このままの給与ではドライバーのやる気が上がらない。やる気の持てる給与にして欲しい」。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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