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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(3)中小運送業の過酷な現実

    2013年4月12日

     
     
     

     中小運送業の経営実態の厳しさについて一例を上げる。



     車両台数10台の運送会社で、A社長は70歳を超えている。後継者はいない。保証協会付で5000万円の借金をしているが、毎月キチンと約定通り支払っている。社会保険料の滞納もなく、消費税も延滞していない。一見すると健全に見える。しかしB/Sを見ると債務超過している。

     A社長は年金180万円で暮らし、会社からの役員報酬はゼロである。年商8000万円で営業利益は赤字200万円。ギリギリ資金繰りを回している。社長は個人で会社に3000万円投入している。資金繰りのためである。しかも社長は荷主の作業を手伝うため、朝5時から昼ごろまで荷役作業をしている。荷役作業が終わって会社に戻り事務作業をする。会社の事務員は朝10時から午後3時までのパート1人。事務作業が終わるのが午後7時頃。A社長は実によく働く。赤字の原因はどこにあるか。

     一つは荷主→元請け→A社という構造にある。元請けは20%のマージンを抜いている。更にドライバーの人件費率が高い。4トン車が主力だが、社会保険料の負担を含めると人件費率は売り上げの50%に近い。

     A社長が3年前に弁護士に相談した時、会社を畳むには300万円かかると言われた。「その時は畳むことを真剣に考えたが、今までついてきてくれたドライバーのことを考えると、どうしても踏み切れませんでした」。ズルズルと月日が経ち、社長の蓄えてきたお金も底を突き、「もうこれ以上お金をつぎ込むことはできません」。車両台数10台、事務スタッフはパート。

    一般管理費は究極的に節約している。しかもA社長は荷主の荷役作業まで手伝っている。ここまでして役員報酬ゼロ、役員借入金3000万円。中小運送業の過酷な現実である。

     顧問税理士もいるが、何のアドバイスもないという。そもそも月次の試算表すら作成しておらず、年1回の決算書の作成が精いっぱい。これで顧問料月額○万円では妥当とは言えない。決算料○万円もキツい。何のアドバイスもなく、たまに口を開くと「辞めたらどうですか」。これではA社長も途方に暮れる。「会社はつぶさず、ドライバーの生活は守っていけるでしょうか」。いよいよ経営再生の幕開けだ。 (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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