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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(209)逃げずに立ち向かえ〈事例A〉

    2018年7月30日

     
     
     

    〈投げたらあかん〉

     

     A社の倒産プロセスをみると、一番の問題は経営者が姿を消したことにある。労働組合結成の一報を受けて、立ち向かうどころか弁護士に任せて、自らは逃げたことである。なぜ逃げるのであろうか。

     運送業の経営者の中には、組合が結成されたことを理由として行方不明になったり、時には自殺する者さえいる。確かに組合の要求は、すぐさま応えられるものではない。もともと労働基準法を意識して経営してきたわけではない。経営者のハラとしては「労働基準法をすべて守るということになると、運送業は成り立たない」と確信している。それが組合ということになると、そうもいかない。だから「お手上げ」となって逃げるわけである。さらに絶望するということがある。

     「うちの乗務員が赤旗立ててオレに刃向かってくるとは、何たることか」と意気消沈し、お先真っ暗の心持ちになる。経営へのやる気がヘナヘナと崩れていく。絶望するわけである。立ち向かうより消えてなくなる道を歩んでしまう。ここのところが問題である。A社の教訓の第一は〝逃げない〟ことである。逃げてしまえば経営を捨てることになるからだ。

     第二の教訓としては、コミュニケーションの不足である。A社長はワンマンタイプを全面に出して今までやってきた。乗務員の言うことに耳を傾ける余裕がなかった。

     「オレの言うことが聞けなければいつでもヤメロ」でやってきた。「社長の口癖は〝ヤメロ〟だ」と乗務員は言い合ってきた。圧倒的にコミュニケーションの不足である。一人ひとりとひざを交えて話し合うことがなかった。心が通い合っていなかった。

     第三の教訓としては、中小運送業の置かれている経営の厳しさである。楽ではない。払いたくても払えないのである。この経営の厳しさを受け止めていく勇気がいるということである。勇気とは何か。それは自社の直面している現実を、働く一人ひとりにしっかりと伝えること。そして、経営の方向性をどうするか、示すことである。

     お先真っ暗ではない。努力する方向を示すことである。それが経営者の仕事というものである。経営の苦しさを外部に求めて、環境のせいにするだけでは問題は解決しない。自力の経営であることだ。

     単なる賃金カットは、その場限りの対処である。根本的な解決とはならない。賃金カットではなく、賃金の支払い方法、いわゆる賃金制度の根本的改革こそが本筋である。

     A社の倒産プロセスは、中小運送業者にとっては、他人事ではない。自らの問題であり、いつ自社に振りかかってきても不思議ではない。これに対する根本的な備えは何か。

     それは経営者のハラである。逃げない経営である。方向性、生き抜く道を指し示していく勇気である。そして何よりも、コミュニケーションを大切にすることである。A社長の逃げ回った姿から、深く学ぶことである。逃げていては問題は解決しない。勇気をもって立ち向かうことである。

              以上

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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