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ブログ・小山 雅敬
第179回:働き方改革を乗り切るための対策
2020年3月31日
【質問】働き方改革に伴う法改正への対策を社内で検討中ですが、運送業の実例や対策実務に関する情報が少なく、なかなか具体策が決まりません。特に賃金体系の見直しに関して、どのように考えていけばよいでしょうか。
働き方改革で推進する項目は「働き方改革実行計画」の中で大きく9つに分類されますが、その中で運送業の経営に最も影響が大きいのは、「非正規雇用の処遇改善」「賃金引き上げ」「長時間労働の是正」の3項目です。非正規雇用の処遇改善は「同一労働同一賃金」を義務付ける新たな法律が2021年4月(中小企業)から施行されます。
また、最低賃金引き上げは年率3%で実施され、本年度も都道府県別に26円から28円の上げ幅になる見込みです。さらに2020年4月(中小企業)から残業時間の上限規制が施行され、自動車運転者に関しては猶予期間を経て、2024年4月から施行される予定です。年次有給休暇の年間5日取得義務化はすでに本年4月から施行されています。
これら立て続けに施行される法改正は中小企業の経営に大きな影響を与えます。何も対策を講じないまま施行日を迎える会社は、収益の確保が難しくなり、経営のかじ取りに大変苦慮することになるでしょう。働き方改革は法施行日までに現在の経営体制を再構築することが前提にあり、対策を講じている会社のみ、その実効性が発揮されるものと捉える必要があります。特に運送業は他業種(例えばオフィスや店舗、工場などでの業務が中心の業態)とは全く異なり、労働時間は不規則ながらタコグラフでガラス張り、持ち帰り残業などは一切できない業態です。実態を変えるしかありません。
このような状況の中で、法違反による罰則適用を避けて健全経営を維持するためには、経営の合理化や荷主との交渉と併せて、賃金体系の見直しを含めた抜本的な対策が不可欠です。
現在、弊社は各地の運送会社で働き方改革に向けた賃金体系の見直し作業を進行中です。最適な改善策は各社各様であり、実態に応じて検討します。改善ポイントは最低賃金充足、法定の割り増し賃金支給、社員のモチベーションを上げる仕組みを組み込み、求人を考慮した賃金体系にすることです。改善の一例を上げれば、業績給、固定給を社員が選択できる賃金制度、残業で稼がなくとも賃金が確保できる仕組み、賃上げしても財務に大きな影響が出ない仕組み、などです。運送会社の賃金制度は経営者の想定以上に多様な作り方ができますので、従前の固定観念を捨てて検討する必要があります。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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