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ブログ・小山 雅敬
第233回:運送会社はSDGsで若者を掴み現状を打開せよ
2022年7月26日
【質問】昨今、「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉を時々聞きますが、具体的に運送会社がどのように取り組めばよいのか、また、経営にどう役立つのかがわかりません。すでに取り組んでいる会社の例があれば教えてください。
SDGsは2015年の国連サミットで全参加国により合意された「持続可能な社会の実現を目指す世界共通の目標」です。
2030年を達成年度と定め、17の目標(解決すべき課題)と169のターゲット(具体的な行動)が示されています。地球規模での目標であるため、表現がやや抽象的で、日々の行動にどう落とし込めばよいのかわかりづらい面がありますが、中身を一つひとつ見ていくと、運送業がすでに日常の経営管理の中で取り組んでいる内容が多く含まれています。
例えば、事故防止やエコドライブ、女性ドライバーの雇用促進、労働条件の改善、などいずれもSDGsの中で要求されている行動に当てはまります。
具体的な活動内容をSDGsの目標やターゲットと照らし合わせて再整理し、さらに注力して取り組むことが求められているのです。それではSDGsの取り組みが運送会社の経営にどのように役立つのでしょうか。
実際に取り組み始めた会社の例を挙げると、A運送会社では事故防止や燃費改善等の目標を立て、事務所内で社長以下の幹部がSDGsバッジを胸につけて、対外的に取り組みをアピールしています。新倉庫の建設に伴い、人材の確保が急務でしたが、若者が想定以上に集まり、採用面の苦労がありませんでした。
現在、若年層の求職者は、単に労働条件の良し悪しだけでなく、仕事に「働く意味」を求めており、社会貢献意欲を満たす仕事に関心を示す傾向があります。SDGsへの取り組みは会社への安心感と信頼感を生み出す効果があります。
また、B運送会社では、現在、あるグローバル企業との新規取引が開始予定ですが、取引開始の理由は女性活躍に注力している企業と契約を結びたいとの先方の意向から選ばれたものでした。
今、世界中の企業がSDGsの取り組み効果に気づき、強く意識しており、取引運送会社にも同様の取り組みを期待しています。
振り返って現状の運送業界を見ると、燃料費の価格転嫁が進まない中で、2024年問題が間近に迫り、長距離運行の仕事を整理して近距離の仕事にシフトしたいと考える運送会社が急増しています。その実現には優良な荷主との新規取引を広げることが重要です。今、優良企業の多くがSDGsに取り組んでいる以上、運送会社も率先して取り組みを開始すべきです。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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