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ブログ・小山 雅敬
第238回:社員が定着しない真の原因
2022年10月14日
【質問】当社では、採用した社員が3か月以内にすぐ辞めていき定着しません。給料は周辺の運送会社よりむしろ高い水準であり、残業時間が特に多いわけでもありません。なぜ定着しないのかわからず、その対策に苦慮しています。
厚労省の雇用動向調査によると、運輸・郵便業における退職者の退職理由には「労働時間、休日などの労働時要件が悪かった」「給料等収入が少なかった」「会社の将来が不安だった」などの項目が上位に並びますが、最も多い退職理由は「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由です。
運送業コンサルティングの現場でも、賃金、休日・休暇、労働時間などの労働条件がいずれも問題のない会社なのに、なぜか社員がすぐに辞めていく会社がありました。経営者が退職者にヒアリングをしたところ、退職した理由として「配車係にえこひいきをされた」「同僚からいじめを受けた」「上司との関係が合わなかった」など、職場の人間関係に関する問題点が次々と浮き彫りになりました。
同社は従来から人材確保対策として賃金や労働時間等の改善に注力してきたため、問題の本質が実は別のところにあることがわかり、衝撃を受けました。一般的にベテランのドライバーや管理者のなかには、現状に固執するタイプが時々いて、自分のやり方以外を一切受け入れようとせず、自分が好ましく思わない人材に対して露骨に無視し、排除しようとする人がいます。そのような社員は大抵、勤続が長いだけで会社にとっては有益な社員ではなく、むしろ有害な社員です。しかし、経営者がそのことに気づかず、または気づいていても放置していると、いつまでも人材が定着しない状況が続きます。
前述の会社の場合は、すぐに該当の問題管理者を現場から外し、営業開拓担当兼安全管理担当の専任管理職として異動させました。賃金等の労働条件はあまり変えず、仕事の役割だけを変えて、部下無しで働いてもらうことにしました。それにより現場の社員のストレスが軽減化され、職場の雰囲気が以前より良くなり、新人の定着度合いも改善されてきました。
人材確保や定着を考える時は、まず足元の職場環境に問題が無いかをチェックすべきです。もし問題が判明した時は、人事異動を含めて迅速に対処する必要があります。現状を変えずに問題管理者の指導や教育に時間を要すると、職場の問題解決が遅々として進まず、その間も会社の傷口を大きくします。人材定着のためには社員が定着しない真の原因を掴み、迅速に解決することが大切です。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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