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ブログ・小山 雅敬
第239回:「標準的な運賃」を実際の運賃交渉等にどう生かすか
2022年10月28日
【質問】当社はすでに「標準的な運賃」の届け出を行いましたが、実際の運賃交渉での使い方がわからず、現状は運賃の届け出だけで終わっています。他社の活用事例や成功事例等があれば教えてください。
2年前に「標準的な運賃」が告示されて以降、全国の届け出件数自体は徐々に増加してきました。しかし、「標準的な運賃」を実際の運賃交渉等に活用して成功している会社は多くありません。背景には新型コロナの影響や激変する国際情勢、円安による経済環境の変化、資材不足による減産体制等があり、交渉相手(荷主等)の経営状況が極めて不安定であることが影響しています。
ただし、それ以外に、「そもそも標準的な運賃を荷主に提示しても運賃値上げにつながらないのではないか」との運送会社の疑念もあると思います。当方が関与している運送会社の中には、「標準的な運賃」を使って運賃交渉に成功した会社が複数あります。
運賃交渉に成功している会社の成功要因は数字での説明です。運賃交渉の基本は運送原価の明示であり、①「標準的な運賃の算出方法に則り、貴社の業務の運賃を試算するとこうなります」②「現在の運送原価を実際の購入価格等を基に計算するとこうなります」と2種類の計算を行い、「すでに人材確保や燃料コストの上昇など自助努力の限界を超えています。貴社の物流に影響が出ないよう努めていますが、今回は〇%、翌年以降〇%の運賃改定をお願いします。貴社の厳しい経営環境も理解しており、段階的な見直しをお願いします」等の言い方をします。
ちなみに全ト協ホームページには、これらの試算が簡単にできるソフトが用意されており、トラック協会の会員企業はぜひ活用すべきです。
一方、失敗した会社の交渉の仕方を聞くと、「標準的な運賃」を旧認可運賃のように「国交省が定めた運賃表はこれなのでこの運賃まで値上げしてほしい」と交渉しています。これでは成功するはずがありません。
そもそも標準的な運賃は、①車両償却期間を5年で計算②人件費の単価を全産業平均(2381円)で計算③実車率を50%で計算、など前提条件が従来荷主に説明してきた計算とは異なるので、「これに合わせてください」と言っても荷主の納得は得られません。
「標準的な運賃」は運送業が抱える諸問題を改善するために必要な「目指すべき運賃」と捉える必要があります。
なお、中小運送業には一次下請け、二次下請けが多いので、元請運送会社は同業者の切実な声を荷主に伝え、交渉する気概が求められます。
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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