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ブログ・小山 雅敬
第241回:教育目的のイエローカードとレッドカードの運用方法
2022年11月25日
【質問】当社ではドライバーへの指導を強化するため、今後は現場の指導にイエローカードとレッドカードの制度を採り入れたいと考えています。運用方法や注意点などを教えてください。
イエローカード(指導書)やレッドカード(警告書)を現場の教育指導に活用しているケースは、中小規模の会社よりも比較的社員数が多い中堅運送会社でよく見られます。懲戒処分としての「始末書」などと違い、①安全管理上改めるべき行動が見られるとき②拘束時間や運転時間の超過が見られるとき③服装、マナーなどの改善を要するとき④軽微な遅刻が発生したとき、など日常の問題行動をその場で注意し、自覚と改善を促すための制度です。
特に幅広い年代の社員が在籍している会社で有効な制度です。新人のみに教育指導を行い、ベテラン社員は「注意してもどうせ治らない」とあきらめて自主性に任せているケースが時々散見されますが、注意しても聞かないベテランドライバーには口頭だけでなく、紙面で注意喚起する方法が効果的です。事故や顧客のクレームを未然に防止する目的で本人と面談した上、安全管理部署が発行します。本人には事実の確認と今後の改善に向けた行動を宣言させるため、署名を求めます。通常はイエローカードが3枚以上たまれば、レッドカードが発行され、レッドカード発行後も改まらない場合は「顛末書」や「始末書」の徴求を検討します。
但し、レッドカードの発行や譴責(始末書)等の懲戒処分はイエローカードの発行が前提となるものではなく、重大な問題行動や懲戒対象の行動が発生すれば、一度の事実でも対象になりますので、社員に制度を周知する際には説明の仕方に気を付ける必要があります。
また、イエローカードやレッドカードの発行状況は社員の人事評価に組み込み、月例給与や賞与、配転等に反映します。なお、イエローカードやレッドカードを作成する際は、具体的に指導した日時や場所、問題行動の事実や指導した内容などを記載できるフォーマットにする必要があります。指導した管理者と本人の確認署名欄も設けます。
万一、後日労使間の争いに発展した場合に指導記録として使える形式にしておくことが大事です。運送会社の労務管理は「指導」と「記録」の繰り返しであると認識する必要があります。問題行動が小さいうちに是正することで、高品質の会社にすることができ、貢献度の高い社員こそが報われる働きやすい職場にすることができます。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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