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ブログ・小山 雅敬
第243回:36協定書の付記事項に要注意
2022年12月30日
【質問】36協定の更新時期が近づいてきました。36協定書の付記事項により送検された実例があると聞いたことがありますが、その内容について教えてください。
2022年3月28日と8月19日に運送会社2社が36協定の付記を根拠に送検されたニュースは衝撃を与えました。2社が届け出ていた36協定書が厚生労働省の雛形だったからです。
現在、大多数の運送会社は36協定書を作成する際に、厚生労働省作成の雛形を使用しています。その雛形には第2条2項に「自動車運転者については前項の規定により時間外労働を行わせることによって『自動車運転者の労働時間等の改善のための基準』に定める1か月についての拘束時間ならびに1日についての最大拘束時間の限度を超えることとなる場合においては、当該拘束時間の限度をもって、前項の時間外労働時間の限度とする」と記載されています。
要するに「改善基準告示の拘束時間の上限を時間外労働の上限とする」ことが規定されており、前述の2社は36協定の限度時間を超えたか否かではなく、拘束時間が改善基準告示の上限を超えた時点で違法と判断されたものです。
また同様の内容は第3条2項の休日の規定にも記載されています。「自動車運転者については前項の規定により休日労働を行わせることによって改善基準告示に定める1か月についての拘束時間および1日についての最大拘束時間の限度を超えることとなる場合においては当該拘束時間の限度をもって前項の休日労働の限度とする」とは要するに、改善基準告示の拘束時間の上限を超えた時点で休日労働の限度違反になる可能性が有るということです。
これらの条文は36協定への記載が必須の内容ではなく、任意で設定されるべきものです。改善基準告示を厳守する目的で、拘束時間の上限を超えた時点で36協定違反とする扱いにすることを意味しており、多くの運送会社はその意味を知らずに(条文自体を読んでもいない会社が多いと思われる)当たり前に36協定書として使用しています。
通常、36協定は4月〜翌年3月の1年間(年度)の期間で締結している会社と1月〜12月の1年間で締結する会社が最も多く見られます。12月末に36協定の更新時期が到来する会社は、今が労働者代表と協定書の取り交わしを行う時期です。協定書の上記記載内容を再確認し、不要な文章と判断されたら訂正削除した後に新たな協定を締結するとよいでしょう。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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