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ブログ・小山 雅敬
第244回:社員代表者が36協定の署名拒否する
2023年2月3日
【質問】1年前に入社してきた社員が最近社員代表に選出され、36協定の署名を拒否して諸手当の増額などの要求事項を突き付けてきました。要求に応じない限り36協定に署名しないと主張しており、大変困っています。どのように対応すればよいでしょうか。
従業員の過半数を代表する社員代表者は従業員を代表して各種労使協定に署名をする権限を有しています。特に36協定は時間外労働や休日労働を行うための前提となる重要な労使協定であり、社員代表者が署名しない場合は労使協定として成立しないため、その事業所では法定時間外労働が一切できなくなります。
運送業で法定時間外労働が一切できないということは、通常の運行指示が出せないことに等しく、経営に与える影響は極めて甚大です。そもそも36協定の内容の是非とは全く無関係な諸手当の増額要求を突きつけ、36協定を人質にして会社を困らせることは許しがたい行為ですが、従業員が自主的に選んだ代表者ですので、冷静に対処する必要があります。
まず他の従業員が36協定の意味を本当に知っているのかが重要です。36協定が締結できない場合には会社が困るだけでなく、従業員自身に重大な影響が及ぶことを理解させる必要があります。ドライバーは実質的に運行ができなくなり、運行できなければ賃金も大幅な減額になります。
また荷主との関係に支障が生じれば、仕事自体がなくなる可能性もあります。会社は従業員を集めてよく説明し、理解させることが重要です。このような事態は運送会社で時々発生することがあり、多くの場合は過去に労働問題等で会社と闘争した経験がある社員が起こすことがあります。
転職して別の運送会社に入社すると、36協定の更新時期直前に「社員代表者の決め方に問題があり違法だ」と主張し、「36協定が無効なので社員代表者の選挙をやり直すべき」と強く主張してきます。そして社員代表を決める選挙に自ら立候補します。その間に職場の仲間に対して「自分が社員代表になれば会社に要求して賃金を上げてやる」と伝え、多くの支持を得て、代表者に選出されます。このような事態を防止するためには、日頃から社員代表者の決め方を法令どおりの方法(選挙や挙手、回覧方式による選考等)で実施し、原則として労使協定を締結するたびに社員代表の選び直しを行うことが大事です。会社が代表者を指名、または選挙もせずに同じ社員が長年社員代表を続けている職場は危険です。
なお、労使間の問題が生じた場合は迅速に弁護士等に相談すべきでしょう。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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