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ブログ・小山 雅敬
第247回:「運賃値上げ」お願い文書の書き方
2023年3月17日
【質問】現状の運賃ではドライバーに満足な給与を支給することができず、最近退職する者も出てきました。また新規採用もできない状態が続いています。荷主や元請事業者に対して運賃値上げのお願いを文書で提出したいと思っていますが、初めてのことで書き方がわからず困っています。
2022年の年末以降、荷主の社名公表など価格転嫁の推進に関する動きが活発であり、運送業の価格交渉を取り巻く環境に変化が生じています。2023年は運賃交渉の好機であり、今まで遠慮がちだった運送事業者は今年こそ要望を明確に文書で出す時期と言えるでしょう。
運賃改定に関するお願い文書には決まったフォームがあるわけではなく、自社の現状とお願いする改定内容をはっきりと明示すればよいのですが、成功確率を上げるためには、次のようにまとめると効果的でしょう。
①運送業界を取り巻く経営環境の厳しさ、特に㋐人材確保の困難さ㋑燃料や車両、タイヤ等のコストが上昇㋒安全や環境にかかる設備費用(ドラレコ、デジタコ等)等を記載
②自社の経営努力の説明、特に㋐燃費向上取組㋑運行効率や作業効率向上に関する工夫㋒人材確保対策(ホームページ作成、求人媒体の多様化等)等を記載
③今後の法改正とその影響、特に㋐「2024年問題」(年960時間の残業規制および改善基準告示改正)と人件費上昇率㋑2023・4月の割増賃金率上昇に伴う人件費の上昇率㋒今後さらに人材不足が進む場合のコストアップ等を記載
④荷主や元請を取り巻く環境変化、特に㋐労働基準監督署による直接要請の開始㋑公取委による社名公表の開始および監視体制強化㋒価格転嫁に関する社名公表(経産省)㋓国土交通省による荷主勧告制度の取組強化等を記載。
以上の内容を2ページ程度にまとめ、そのあとに現状の運送原価に関するデータを記載します。
原価の説明に際しては、変動費のキロ当たり単価と固定費の1時間当たり単価の計算根拠を示し、取引先から請負う業務に係る原価の実態を明示します。
なお「標準的な運賃」に関しては、取引先の業務に置き換えた場合の標準運賃を試算し、参考値として明示します。標準的な運賃は水準が高すぎるため、その数値への引上げを要望するのではなく、国土交通省による標準的な運賃との乖離幅を示す目的で明示します。
最後に運賃値上げの具体的な上昇率について記載します。この際に遠慮して低めの数値を記載するのではなく、今後のコストアップ要因を踏まえて適正な希望額を要望することが大事です。文書は多くとも5ページ以内でまとめてください。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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