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ブログ・小山 雅敬
第248回:原価計算無しで運賃交渉できる簡便法
2023年4月7日
【質問】2024年問題を目前にして今年は運賃交渉に取り組むつもりですが、原価計算が苦手でよく理解できないため、説得力のある要望書を作成できません。原価計算無しで簡単に引上げ要望額を算出し、荷主と運賃値上げ交渉ができる方法はないでしょうか?
「運賃改定のお願い」などの書面で荷主に運賃引き上げを要望する場合、一般的には原価計算を利用して実際にかかるコストと現行運賃との乖離幅を明示し、適正な運賃への是正をお願いする方法が最も望ましいと言えます。
しかしながら多くの運送会社では日頃から原価管理をしておらず、運賃交渉に必要と言われても馴染みが無いため、二の足を踏む会社があります。
そもそも運賃交渉は荷主側が納得して運賃改定に応じてもらえればその目的は達するわけで、何が何でも原価を示して交渉する必要はありません。
ただし荷主側にコスト増となる痛みを伴う申し入れであり、「その要望額がどのような計算で出てくるのか」の根拠を示すことは最低限必要です。
関与先運送会社の運賃交渉アドバイスにあたり、原価計算による方法とは別に原価計算を使わない簡便法による計算で運賃交渉を行うよう勧めることがあります。
算出方法は極めて簡単です。
当該荷主との前回の運賃取り決め時点(不明な場合は3年前時点、など)における燃料価格や車両価格(デジタコなど車両付属品含む)、タイヤチューブ価格、ドライバーの給与(実際の支払い賃金ではなく、募集にあたり応募が来る賃金水準)などの主要なコスト項目について、現在の各項目の金額との乖離幅を上昇率で計算し、各コスト項目の運賃に占める割合(簡便に決算書の運送原価明細から算出)を掛けて、トータルで必要な運賃引き上げ率を計算します。
その必要引き上げ率をもとに「現行運賃を何%上げてもらわないと採算が取れません」とお願いする方法です。
この方法は本来の原価計算(変動費と固定費に分解し、当該荷主から受託する運行実態に応じて計算する方法)に比べると正確性には欠けますが、感覚的には納得性が高いものです。
荷主側に「燃料が何%上昇、車両価格が何%上昇、給与水準が何%上昇、…」と各コストの上昇要因と上昇率を示すことで、運賃を改定する理由が説明できます。
また運賃を構成する原価割合を使って算出していますので、根拠のある数字になります。
運賃交渉では根拠が説明できない数字を要望すると、その段階で不信感を持たれて失敗してしまいますので、原価計算に不慣れな会社は簡便法を使って交渉することをお勧めします。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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