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ブログ・小山 雅敬
第264回:トラックGメンを利用して現状を打開する
2023年12月22日
【質問】先日、国土交通省のトラックGメンから弊社にヒアリングに来たいとの連絡を受けました。ある荷主との取引状況を確認したいとのことですが、実態を正直に話してもよいものでしょうか。話した内容が荷主に伝わると取引に悪影響が出るのではと懸念しています。
6月2日の「物流革新に向けた政策パッケージ」により、荷主・元請の監視強化に向けて7月21日に「トラックGメン」(正式名称:トラック荷主特別対策室)が創設されました。
10月以降は監視体制をさらに強化するため、厚生労働省の各労働局に配置された荷主特別対策チーム(荷主特別対策担当官)と連携して荷主・元請や運送会社への合同調査・ヒアリングを実施しています。
さらに10月6日の「緊急パッケージ」に基づき、11〜12月を「集中監視月間」と定め、7月以降に収集した情報や現場での調査内容をもとに問題行為の可能性がある荷主・元請に対して「働きかけ」や「要請」などの指導を行っています。
弊社の関与先運送会社の中にも、11月に特定の荷主に関する合同ヒアリングの目的で国土交通省と厚生労働省の担当官の訪問を受けた会社があります。
ヒアリング予定日の3日前に、同社の経営者から「トラックGメンに実態をそのまま話しても大丈夫でしょうか?」と相談がありました。自社の名が荷主に伝わると困ると心配していました。弊社はヒアリング対象の該当荷主に関して、契約に無い付帯作業を強いられていることや時間指定が曖昧で常時待機時間が発生していること、高速代が払われないことなど、取引上の課題について聞いており、「トラックGメンは情報提供先の名前を必ず伏せて荷主と対応するので、安心して実態をそのまま伝えたほうが良い」「現状を変える絶好の機会を与えられたと捉えるべきです」とアドバイスしました。
多くの運送会社は物流2法施行(1990年)以来長く続いた過当競争時代に、簡単に取引を切られた経験があり、荷主と安定した取引を継続したいと望んでいます。荷主との無用なトラブルは避けたいのが本心です。
しかし、現状を打開するためにはトラックGメン(及び荷主特別対策担当官)の活動を効果的に利用するほうが得策です。今まで荷主に何度お願いしても聞き流されてきた課題を解決するには個社の努力だけでは時間がかかりすぎます。トラックGメンは荷主の本社に直接「働きかけ」を行いますので、荷主に対するインパクトは運送会社が口頭で100回お願いするより効果があります。2024年問題を乗り切るために政府の取り組みを最大限利用すべきでしょう。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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