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ブログ・小山 雅敬
第269回:なぜ人事評価制度が形骸化してしまうのか
2024年4月5日
【質問】社員のモチベーション向上と人材確保のために7年前から評価制度を導入していますが、管理者やドライバーからは「評価が実態に合わず形骸化している」と不満が出ています。評価制度改定の検討にあたり、運送会社に適する評価制度についてアドバイスをお願いします。
運送会社で形骸化しやすい人事評価制度の典型例は、「あいさつ」や「マナー」など現場管理者が実際に見ていない評価項目を設定しているケースや「積極性」「行動力」「協調性」など基準が曖昧な評価項目を設定しているケースです。
例えば「あいさつ」や「マナー」などは確かに大事な行動ではありますが、発着荷主と接する現場を管理者が直接監視していない以上、結局は事務所内で見るイメージで評価することになります。
また、「積極性」などの定性的な項目も同様に評価者の捉え方次第で決まり、イメージ評価に陥りがちです。評価制度は客観的に納得できる評価でないと、信頼性に欠け、会社が勝手に給与を決めているとの不信感を生じさせます。
特にドライバーの場合は、労働と賃金の連動性に極めて敏感であり、本人の労働実感と評価に食い違いが生じると、不満が強く出て、管理者への反感や離職につながります。へたな評価制度なら無い方がましです。
運送会社の評価制度は、ほかの業種とは異なり、客観的に把握できる事実のみで評価を行う方が適しているのです。
例えば、安全行動の評価として「事故の発生状況」を見る場合、単に「事故の有無」だけを見るのではなく、「何回目の事故か」「実損額や取引への影響度合い」「事故発生後の改善状況」などを多角的に評価するのです。
さらに日常の安全行動を見るために「デジタコの安全運転評価点」や「ドラレコの危険度チェック結果」などの客観的記録をもとに評価するのです。
最近では「改善基準告示や労働時間の順守度」を運転日報等のデータをもとに評価する会社も出ています。
また、「洗車の励行」や「作業ミス発生状況」などを必要に応じて設定するとよいでしょう。重要なことはデータで説明できる客観的な評価項目に絞ることです。
定性的な評価項目は「勤怠状況」(無断欠勤・遅刻などの回数)のほかに「指導票(イエローカード)」や「警告書(レッドカード)」などの発行回数(業務中に厳重注意された回数)、懲戒処分としての「始末書」などの有無および件数、などを評価項目に設定します。
定性的な評価に関しても具体的な事実の記録に基づいて行う仕組みに集約すれば、評価者によるイメージ効果が避けられ、本人も会社の評価を納得して受け入れることにつながります。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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